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呼吸器|呼吸不全

呼吸不全の基礎知識

呼吸困難とは違う? 酸素が不足した状態「呼吸不全」とは

2022年3月25日|2,146 VIEW

「息が苦しい」「息切れがする」など主観的な感覚を「呼吸困難」と呼ぶのに対して、医学的に厳密な取り決めがあるのが「呼吸不全」。
血液中の酸素が異常に少なくなったり、二酸化炭素が異常に多くなったりする病気を指します。肺機能の低下によって、心臓、脳、腎臓など他の臓器にも影響を及ぼす可能性があります。

呼吸困難とは違う? 呼吸不全とは

呼吸不全とは、空気中から酸素を体内に取り入れて、体内でできた二酸化炭素を体外に放出できなくなった状態を指します。原因は肺結核、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息など肺の疾患が影響する全ての病気。このほか慢性閉塞性肺疾患などの場合は、慢性的に呼吸不全を起こしている場合が多く、1ヶ月以上続くと「慢性呼吸不全」として診断されます。

呼吸困難は主観的な感覚を指すのに対して、呼吸不全は医学的にきちんと定義されています。

呼吸不全の条件

・動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下

呼吸不全の種類

■I型呼吸不全
二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合。血液中の二酸化炭素が45mmHg以下であることが条件です。「低酸素血症性呼吸不全」とも呼ばれ、肺組織に異常がある場合に起こりやすいです。

【原因例】
・急性呼吸圧迫症候群
・重症肺炎
・心不全
・腎不全
・肺血栓症 など

■II型呼吸不全
血液中の二酸化炭素が45mmHgを超える場合、二酸化炭素濃度が非常に高くなっています。何らかが原因で正常な呼吸が妨げられるために起こるもので、「高炭酸ガス血症性呼吸不全」とも呼ばれています。呼吸を促すために無意識に反応する反射などが低下したり、気道などがふさがった場合に起こります。
小児の場合だと、おもちゃや食べ物をのどに詰まらせたときに、この症状に陥ります。

【原因例】
・甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの値が低くなった場合)
・睡眠時無呼吸症候群
・鎮痛剤やアルコールの過剰摂取
・肺の損傷
・気道がふさがったり狭くなったりする など

息苦しさだけじゃない、呼吸不全の症状

血中に酸素が少なくなることで、息切れが起こるようになります。重症化すると階段の上り下りや家事など身の回りのことをするだけでも症状が出るようになり、日常生活が困難に。また血液中の二酸化炭素が高い状態が続くと、血圧上昇による頭痛や、手を広げたときなどにゆっくりと不規則な震えが起こる症状「羽ばたき振戦」のほか、場合によっては意識が低下することもあります。

このほか血液の酸素量が低下するので、皮膚の色が青っぽくなる「チアノーゼ」や、脳や心臓の機能不全による眠気、不整脈などの症状も報告されています。ゆっくりと進行した場合は、自覚症状が乏しいこともあるので、身体になにか違和感を感じたら医師に相談してみましょう。

主な症状

・日常生活での息切れや息苦しさ
・皮膚の色が青っぽくなる
・眠気

息苦しさを感じたら病院へ、診断と治療方法について

もしも息苦しさを感じた場合は、まずは病院にかかりましょう。病院に着くとまずは、酸素レベルの確認です。血液サンプルの採取のほか、センサーを指か耳たぶに取り付けることで血液中の酸素レベルを測ることができるパルスオキシメーターを使用して、呼吸不全かどうかを判断します。

そのほか原因を特定するために胸部X線検査などの他の検査を実施。基礎疾患があれば呼吸不全の可能性は高まります。

もしも呼吸不全を引き起こした場合、それぞれの問題を解消するために様々な治療が行われます。

酸素量の改善

酸素不足に陥っているので、酸素吸引を行います。

二酸化炭素濃度の改善

II型呼吸不全の場合、肺の換気に異常が出ているのが原因なので、肺の空気の出入りをサポートする人工呼吸器を取り付け、二酸化炭濃度を低下させます。

また、高齢者は加齢に伴い肺の機能が低下するため、肺炎発症後に症状が重症化するリスクが高くなります。

呼吸不全の根本原因の解決

呼吸不全を発症するのは肺や呼吸器になにか基礎疾患を持っている場合がほとんど。そのため根本原因となる基礎疾患を治療するための措置を行います。

日常の生活がトリガーとなって引き起こされる病気のため、生活習慣の見直しはもちろん、「自分が今病気を持っていないのか」を把握しておくことも重要です。予防のためにも、気になった方はまずは病院で医師に相談することをおすすめします。


参考文献・出典など
特定非営利法人日本緩和医療学会
■MSDマニュアル呼吸不全
■国立長寿医療研究センターあなたの息切れ(呼吸困難)の原因は?

画像提供:PIXTA

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