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脳・脊髄・神経|多発性硬化症

多発性硬化症の基礎知識

再発と寛解を繰り返し感覚や運動に関わってくる神経の難病、多発性硬化症

2022年3月22日|813 VIEW

「多発性硬化症」は、脳や脊髄、視神経のあちこちに病巣ができ、さまざまな症状が現れるようになる病気です。病理解剖すると病巣が固くなっていることからこのような病名がつけられています。厚生労働省指定の特定疾患で、完治するのは難しい難病です。今回は「多発性硬化症」について解説していきます。

多発性硬化症の特徴的な症状は?

私たちの体は、脳で得られた情報を体に伝えることによって、さまざまな活動を行っています。情報を伝達するのは、神経細胞から伸びる細い神経のような線(軸索)です。これは電線のイメージが近いと思います。電気活動で情報の伝達が行われていて、電気のショートが起きないように、軸索は髄鞘(ずいしょう※ミエリン鞘とも呼ぶ)で覆われています。髄鞘が絶縁体の役割を果たしているのですが、破壊されて軸索が剥き出しになると情報がスムーズに伝わらなくなります。この状態を脱髄と呼びます。

脱髄が起きると、脳から発信した情報がスムーズに伝えられなくなるので、さまざまな症状が引き起こされます。脱髄の病変は大脳、小脳、視神経、脳幹、脊髄など、中枢神経の組織であればどこにでも起こる可能性があり、脱髄の部位によって異なる神経症状が見られます。

特徴的な症状

・視力の低下
・視野が欠ける
・歩行がふらつく
・手足の感覚障害
・排尿障害
・高次脳機能障害 など

多発性硬化症は病気の経過に応じて分類されます。症状の再発と寛解を繰り返す「再発寛解型」、最初から障害が進行する「一次性進行型」、再発と寛解を繰り返しつつ、次第にゆっくりと障害が進行する「二次性進行型」などがあります。

年に3〜4回の頻度で再発する人から、数年に1回しか再発しない人まで、かなり個人差があります。どのくらいの速さで進行していくか予測も難しい病気です。しかし、放置しておくと寝たきりや予後不良になる場合があるので、診断されたら早めに再発予防の治療が必要です。

多発性硬化症を引き起こす要因は?

多発性硬化症は20〜30代などの若い人がよく発症する病気で、男性よりも女性に多い傾向があります。発症に至るメカニズムは解明されていませんが、自己免疫が関係している説が有力と言われています。

私たちの体内では、ウイルスや細菌などの外敵から体を守るため、リンパ球などが活動しています。リンパ球が何らかのきっかけで、誤って髄鞘を外敵や異物と認識して破壊し、多発性硬化症を引き起こすのではないかと考えられています。人から人に感染する病気でもありません。

多発性硬化症を予防するための対応策は?

発症の原因が明らかになっていない難病のため、適切な予防策はありません。肝心なのは発症してからの早期治療です。早めに治療を進めることで、障害の進行を抑えることが期待ですます。厚生労働省指定の特定疾患であるように、完治するのは難しい神経の難病ですが、うまく付き合っていくことが可能な病気です。


参考文献・出典など
■公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター多発性硬化症/視神経脊髄炎
多発性硬化症jp
ユビーAI受診相談

画像提供:PIXTA

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