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更新日:2023年6月27日 592PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

介護の困りごと・排尿管理| 医療職監修のポイントとセルフチェック

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  • 中日新聞LINKED
監修者

気になる症状

療養生活や在宅介護の中で、尿漏れや失禁、トイレが近い、尿が思うように出せないという方はいらっしゃいませんか?もしかしたら、排尿管理・ケアが必要なサインかもしれません。

今回は、医療スタッフが、療養生活中や在宅介護における排尿介助のポイントをお伝えします。

排尿管理とは?

排尿管理とは、排尿が高齢化や病気など何らかの原因で上手く行うことができない(排尿障害)場合に、薬剤や補助器具、運動などによって、排尿をコントロールすることです。

排尿のサイクルである「畜尿→尿意を感じる→我慢する→排尿しようと→行動を起こす→排尿する→後始末をする」のうちどれかひとつでも上手くいかなければ、排尿サイクルはせき止められてしまい、排尿障害となってしまいます。その程度によっては、介助やケアが必要になるケースがあります。

上記の通り、排尿について評価することができ、評価に応じた介助の準備、環境の整備を行う必要があります。適切な介助と整った環境がない場合、被介助者へ身体的な負担や精神的な負担を与えてしまうため、QOLの低下や持病の悪化、新たな疾患の発症に繋がる恐れがあります。

また、被介助者のためだけではなく、介助者の負担軽減の観点からも適切な介助と整った環境の準備は非常に大切なことだと言うことができます。
排尿管理について、少しでも不安があったり、気になる点がある場合には、かかりつけ医または専門の医療スタッフがいる機関に相談しましょう。

目次

排尿管理や排尿介助でおさえておきたいポイント

排尿管理において、適切な介助を行うことと整った環境を準備することは、非常に大切です。万が一、適切な介助が行われず、環境も整っていない場合は、下記のようなリスクが高まります。

QOLの低下

自身の思うように排尿ができなかったり、失禁してしまったりすると、それを精神的苦痛として感じてしまったり、食事制限や生活習慣の改善を余儀なくされる場合があります。

新たな疾患の発生

前述したように、被介助者の中には排尿管理が精神的苦痛となる方もいらっしゃいます。その苦痛から、排尿の回数を減らそうと、排尿を無理に我慢したり、水分摂取量を極端に減らしてしまう方もいます。しかし、これらの対応は膀胱炎や脱水症状などを引き起こす可能性があり、大変危険ですので、絶対に行わないようにしましょう。

転倒

適切な介助がないと、トイレまでの道中や服の上げ下げを行っている際の転倒のリスクが高まります。高齢者の場合は、骨折しやすいうえに、骨がくっつくまでに長い時間がかかることが多いです。最悪の場合には、完治することなく寝たきりの生活を強いられる可能性もあります。また、頭を強く打ってしまい、取り返しのつかない事態になるおそれもあります。

目次

具体的な介助方法と望まれる環境

この章では、QOL低下、新たな疾患の発生、転倒のリスクを回避するためにできる人的サポートと環境整備について解説します。

排尿管理やケアの人的サポート

・トイレへの移動や服の上げ下げ、便器の立ち座りの際に支えが必要な場合は、しっかりと支える
・介助の際は、介助動作ひとつひとつを声に出し、相手に何をしようとしているのか伝える
・トイレ中、被介助者からの呼びかけがあった際にすぐ反応できるよう近くで待機する
・健康状態管理のため、尿や陰部に異常がないか定期的にヒアリングを行う
・排尿日誌(※)をつけて、排尿の状態を知りましょう

※【排尿日誌とは】
排尿時刻・排尿量・起床と就寝の時刻、尿失禁の有無、飲水量を記入し、その時々の付加的な状態として、尿意の強さ(尿意切迫感)・飲水量(多尿であれば・残尿感の有無などを記録するものです。

排尿日誌の活用

【排尿日誌のつけ方】
・起床時間、就寝時間を記載する
・朝起きてから、次の朝起きるまでの24時間記載
・計量道具
(500mlくらいの取っ手付きの市販の計量カップ、ペットボトルや500mlの牛乳パックなどをカットして目盛りをつけた容器なども利用できます)
・計測した1回尿量を日誌に記載する
・尿意切迫感、失禁があれば(多い、少ない、など)を記載する

【排尿日誌からわかること】
・1日の排尿パターンが明確になります
・1日の尿量、回数(通常、1日1000~1500ml、昼間3~7回、夜間0~1回がめやす)
・1回排尿量(1回あたりの排尿量は250~500ml程度)
・飲水量も記入(排尿量が1000~1500mlになるよう飲水を調整する)
・昼間と夜間の排尿バランス、夜間多尿

【排尿日誌の使い方】
・排尿の時間や漏れやすい時間帯などがわかれば前もってトイレに行く、おむつをつけている場合タイミングよく排尿誘導を行うために利用できます。
・夜間の尿回数が多い場合、塩分を控え、夕食以降・夜寝る前までの水分や、特にカフェイン、アルコールの摂取は控えめにしましょう。また、夕方の軽い散歩は脚のむくみを解消して夜間の尿量を減らしたり、ストレスの解消になって安眠に繋がります。

排尿に関する症状や病気には、さまざまなものがあり、性別や年齢によっても異なります。症状や病気に応じた適切な治療を行うため、排尿状態を正確に伝えるためにも排尿日誌が役に立ちます。尿漏れや失禁、トイレが近い、尿が思うように出せないなどの症状がみられる場合は、かかりつけ医に相談をしましょう。

環境整備でのサポート

排尿を安全に行う環境づくりや、万が一失禁をしてしまっても大丈夫な環境づくりをし、安心して生活できるようにします。

・トイレまでの動線やトイレ内に手すりを設置する
・トイレの空間を広くして、立ち座りしやすいようにする
・被介助者の手が届きやすい位置にペーパーホルダーを設置する
・集尿器や尿パッド、ポータブルトイレなど、適宜被介助者に合った補助器具を使用する
・万が一の失禁に備えて、防水シーツを使用する

また2022年度より介護保険を利用した福祉用具レンタルに排尿予測支機器が加わりました。被介助者の膀胱内の尿の溜まり具合を感知し、本人や介助者に伝えて、トイレ誘導の目安にすることもできます。

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排尿管理や介助に役立つ介護用品

この章では排尿管理や介助を安全に安心して行えることを目的にした介護用品を紹介します。

転倒予防のための環境づくりを行う

トイレ用フレーム
便座からの立ち上がりをスムーズに行えるようひじ掛けのついたフレームです。
手すり
住宅改修で設置もできますが、レンタルで設置可能な手すりもあります。

排尿をいつでも行えるように

ポータブルトイレ
部屋に置くことのできるトイレです。便座の中にバケツが入っていて、排泄物をバケツにたまる構造になっています。要介護認定を受けている方は、ケアプランによっては、特定福祉用具として、介護保険を利用して安価に購入できます。

集尿器
いわゆる「しびん」だけでなく、最近では、その介護状態により利用できる集尿器や採尿器の種類が増えました。どの場面で使用したいかをケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談してみてください。

尿パッド、介護用おむつ、防水シーツ
万が一、尿をしてまっても大丈夫なように尿パッドや介護用おむつもあります。最近では「お守り代わり」に夜間だけ使用している方もいます。また防水シーツは撥水加工しつつ、適度な量ならば吸水するシーツです。ふだん使用している敷布団やマットレスに敷いて使うことができます。

排尿を予測する

・排尿予測支援器
排尿のタイミングを認識し、適宜、排尿できることを目的に開発された福祉用具です。被介助者の膀胱内にある尿量を感知して本人や介助者にお知らせします。

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排尿管理・ケアについての総まとめ

ここまで排尿管理や介助に関する注意点や対策を述べてきましたが、改めてポイントを整理します。

排泄は生きている上で誰もが必ずする動作です。気をつけたいポイントをしり、安心した生活を送れるようにしましょう。
気になる方はセルフチェックをして、かかりつけ医やお世話になっているケアマネージャーへ相談してください。

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画像提供:PIXTA