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更新日:2023年6月27日 1,341PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

介護の困りごと・ベッド・車椅子移乗|医療職監修のポイントとセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 松下 知起
  • みよし市民病院 リハビリテーション課 理学療法士

気になる症状

ご家族の介護で移乗の際に最近時間がかかるようになったり、不安になったことはありませんか?それは、移乗について考える機会かもしれません。

今回は、医療スタッフが移乗介助についてのポイントをお伝えします。

移乗の介助とは?

移乗とはベッドから車椅子や、車椅子から椅子などへ乗り移ることです。移乗をすることにより、ベッド上の生活だけでなく、車いすへ移って外出したり、ダイニングの席へ移動して家族を同じ食卓で食事をとるなど活動範囲やできることも増え、生活の質(QOL)の維持にもつながります。

一方で、移乗は正しい知識に基づいて行わないと、転倒や転落などのリスクもあります。高齢者にとって、転倒や転落は骨折の原因になり、場合によっては寝たきり生活を余儀なくされるケースもあります。また移乗を素早くすませようと力任せに行うと介助する方、される方にも負担がかかってしまいお互いが苦労することになります。安全でスムーズに介護できるポイントを押さえていきましょう。

目次

移乗介助でおさえておきたいポイント

移乗は、そのシーンと目的により使い分ける必要がありますが、基本になるポイントからおさえていきましょう。

移乗のポイント

1)ベッドや車椅子から足を床につけて座る
2)ベッドや車椅子に浅く腰掛け、足を手前に引く
3)上に持ち上げるのではなく、本人がお辞儀するイメージで実施する
4)立位が保持できたらゆっくりと向きを変えてお辞儀しながらゆっくり座る
5)横になったときに枕の位置に頭部がくる位置に座りなおす

移乗はいわば、介助する側とされる側の共同作業です。お互いの様子を見ながら声を掛け合い行います。また移乗中に起こりうるリスクとして「転倒」「皮膚のはがれ・不快感」「腰痛」があります。

転倒

被介助者の立ち上がりの際の膝折れ
高齢者によっては起立性低血圧や、三半規管の衰えによるめまいにより立ち上がる途中に体勢が崩れしまうケースもありますので、注意しましょう。

被介助者が椅子からずり落ちる
筋力が低下してしまい姿勢を保持するのが難しくなった高齢者の場合、浅く座った際にシートやベッドからずり落ちてしまうこともあります。そのためベッドや車椅子のアームレストや、座椅子のひじ掛けなどをしっかりもってもらうようにしましょう。

皮膚のはがれ・不快感

被介助者の皮膚のはがれ
車椅子やベッドは鉄製のパイプを使用しています。高齢者は皮膚が弱くなっていることもあり、こうしたパイプにあたった際にけがをしてしまうこともあります。

服の食い込み
移乗の際に介助者がズボンを引き上げすぎてしまい、ズボンや下着が食い込んでしまい不快感が出てしまうこともあります。

介助者の腰痛

基本的には持ち上げずに介護をすることが望ましいのですが、時間の関係上で持ち上げる介護を続けてしまい介助者が腰痛で悩まされることもあります。

厚生労働省が定める職場での腰痛予防対策指針では

(1) 人力による重量物取扱い作業が残る場合には、腰に負担がかからないようにする。
(2) 男性が人力のみで取り扱う物の重量は、体重のおおむね 40%以下となるように。女性の場合は男性が取り扱える量の60%くらいまでとすること。
(3) 上記の重量を超える場合は、2名以上で行うこと

とされています。在宅での介護も同じことがいえるため、持ち上げて移乗させることは控えるようにしてください。

目次

適切な介助と環境の重要性

この章では、安心な移乗を行うために人的サポートと環境整備について解説します。

移乗の人的サポート

移乗する対象物への適切な位置の確保
安全に移乗するためには適切な位置、体勢をとることが必要です。例えばベッドから車椅子へ移る場合は、ベッドに対して20度〜30度(被介助者の状態に応じて角度は変えます)の角度に車椅子を置き、車椅子のブレーキをかけて、足が当たらないようにフットサポートを上げた状態にしておきます。ベッドの高さを車いすの座面と同じ高さまたは移る側が低くなるように設定します。

また片麻痺がある場合は、健側(麻痺のない方)に設置するようにして移乗しやすい状態をつくります。

転倒・転落の予防
起立性低血圧やめまいによる体勢の変化に留意しながら、移乗をサポートします。

福祉用具を適切に使って移乗しやすく
車椅子や介護ベッドは移乗をしやすくするための仕組みが施されています。
例えば、介護ベッドであれば移乗しやすい高さに合わせたり(移乗する対象物が下の方が移動させやすい)、車椅子側のアームレストを跳ね上げたりして、移乗のしやすい環境を作ります。

介助者の負担軽減も

移乗を促すスライディングボードや、介護用ベルトを介助者につけていただくことで、介助者自体の負担も軽減します。

目次

移乗介助に役立つ介護用品の具体的な例

この章では移乗を円滑に行うのに役立つ介護用品や対応策についてご紹介します。

移乗を円滑に行う

スライディングシート
ナイロン製のシートで摩擦を減らし体位変換や移乗の負担を減らします。

スライディングボード
ABS樹脂などでつくられたボードで、ベッドや車いすとの間におき、持ち上げることなく座位保持したまま横滑りさせながら移乗させます。

移乗用リフト
介護用のリフトでベッドから車椅子、車椅子から椅子などを介助者に負担なく行います。

介助者の負担を軽減する

介護用ベルト
握りのついたベルトを被介護者に着用していただき、立ち上がりや座る際のサポートをします。
これらの用具は介護保険を利用してレンタルすることもできますので、ケアマネージャーや福祉用具貸与事業所へ相談しましょう。

目次

移乗介助の総まとめ

ここまで移乗介助に関する注意点や対策を述べてきましたが、改めてポイントを整理します。

気をつけたいポイントを知り、安心した生活を送れるようにしましょう。
気になる方はセルフチェックをして、かかりつけ医やお世話になっているケアマネージャーへ相談してください。

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