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更新日:2022年8月9日 1,440PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

症状が現れにくい非アルコール性脂肪肝、進行すると肝硬変や肝がんに

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 清水 省吾
  • 岐阜県総合医療センター 消化器内科部長

気になる症状

非アルコール性脂肪肝とは、ほとんどお酒を飲まないにも関わらず肝臓に中性脂肪が蓄積した状態をいいます。

そもそも脂肪肝とは肝臓に脂肪が蓄積された状態を指しますが、大きく分けて2種類の脂肪肝があります。

1つはお酒を飲み過ぎた人がなるアルコール性脂肪肝で、もう1つがお酒に起因しない非アルコール性脂肪肝です。

非アルコール性脂肪肝は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病が背景にある場合が多いです。


健康診断を受ける成人の20〜30%が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD※ナッフルディー)と診断されます。多くの場合は脂肪肝のまま進行することはありませんが、10〜20%の割合で肝硬変や肝がんに進行することがあるため注意が必要です。

しかし非アルコール性脂肪肝には特徴的な症状がなく、症状が現れた時にはすでに進行している可能性もあるため、健康診断などで脂肪肝を疑われたらかかりつけ医に相談をしましょう。

今回は非アルコール性脂肪肝に関する気になる症状を中心に、原因や治療・検査について解説をします。

ほとんど症状は現れないが、進行すると黄疸やむくみも

「肝臓は沈黙の臓器」という言葉をよく耳にしませんか?
実は脂肪肝の段階では特徴的な症状がなく、無症状で経過することがほとんどです。
これはアルコール性脂肪肝でも、非アルコール性脂肪肝でも同じです。
ただし、脂肪肝が肝炎や肝硬変に進行するとさまざまな症状があらわれるため、ここでは脂肪肝が進行した場合の気になる症状を解説します。

倦怠感・疲労感・食欲不振

脂肪肝が進行し炎症を伴うと、肝硬変に進展します。肝硬変になると倦怠感・疲労感・食欲不振などの体調不良が現れる場合があります。
とはいえ、早い段階では多くの方は無症状です。

黄疸(おうだん)

脂肪肝がさらに進行し肝臓の機能が低下してくると、目に見えて症状が現れてきます。
血液中でヘモグロビンが古くなって壊れると、黄色いビリルビンという色素が生じます。
ビリルビンは通常肝臓に送られて処理されますが、肝臓の機能が弱まることで全体としてビリルビンが増加し、皮膚や目の色が黄色くなります。

腹水(ふくすい)・むくみ

肝臓では血液中を流れるタンパク質を合成していますが、肝臓の機能が低下することで血液中のタンパク質量が減少し、お腹の周りや手足にむくみができたり、お腹に水がたまる場合があります。

紅斑(こうはん)・クモ状血管腫

エストロゲンというホルモンの代謝異常によって、肩・二の腕・胸などの毛細血管がクモの足のように広がる場合があります。
また手のひらや指に紅斑(皮膚の赤み)が現れるようになります。
エストロゲンは女性ホルモンの一種であるため、男性では乳房や乳首が大きくなる場合があります。

血が止まりにくくなる

肝臓では血液を凝固させる血液凝固因子というタンパク質を生成していますが、その機能が低下することで、出血時の血が止まりにくくなります。

気になる症状がある方は、すぐにかかりつけ医や消化器専門医に相談しましょう。

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非アルコール性脂肪肝の最も多い原因は肥満

非アルコール性脂肪肝は生活習慣病が背景にある場合が多く、最大の原因は肥満です。それ以外には急激なダイエットや閉経などがあります。

肥満

脂肪肝の最大の原因は食べ過ぎや運動不足などによる肥満です。
食事でとった糖分は通常はグリコーゲンとして肝臓に一時的に蓄積されますが、糖分をとりすぎるとグリコーゲンではなく中性脂肪として肝臓に蓄積されます。
そのため、食べ過ぎや運動不足などが原因で摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る日々が続くと、中性脂肪が増え脂肪肝となります。
高級食材のフォアグラも、実は過剰にエネルギーをとらせた脂肪肝の一種です。

急激なダイエット

主な原因は肥満ですが、実は急激なダイエットなどで栄養バランスが崩れることも脂肪肝の原因になります。
肝臓から血液中に中性脂肪を送り出す際には超低密度リポタンパクというタンパク質を用いますが、栄養バランスが急激なダイエットによって崩れると、このタンパク質も不足します。
その結果として、中性脂肪が血液に送り出されず肝臓に蓄積されることで非アルコール性脂肪肝を引き起こします。

閉経

女性の場合は閉経後に脂肪肝になる方が増える傾向で、40代の女性で非アルコール性脂肪肝を患っているのは10%前後ですが、60代になると30%超に増加します。
閉経によって女性ホルモンが減少することが原因と考えられており、女性ホルモンは内臓脂肪を蓄積されにくくしますが、閉経後に女性ホルモンが減少すると閉経前よりも肝臓に脂肪が蓄積されやすくなり、知らないうちに非アルコール性脂肪肝になっていたという場合があります。

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治療の基本は、食事療法と運動療法で生活習慣の改善を

非アルコール性脂肪肝は肥満や糖尿病・高血圧などが背景にあることから、まずは食事療法や運動療法などで生活習慣を改善することで、脂肪肝の進行を抑えることができます。

食事療法

間食を減らす、甘い飲み物は飲まないなどから食事を見直し、1日あたりの摂取カロリーは標準体重×25〜35kcalを目標に、ダイエットなどでよく聞く、高タンパク低脂肪食を目指しましょう。

運動療法

ウォーキングやサイクリングなどの軽く汗をかく有酸素運動を30分以上、週に4日程度行うようにしましょう。スクワットなどの筋力トレーニングを組み合わせて行うとより効果的です。

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問診・血液検査に加えて、超音波検査などを行う

通常は問診や血液検査に加え、超音波検査、CT検査、MRI検査などを行います。

問診

普段の食生活や飲酒、他の生活習慣病の有無や薬の服薬状況などを確認します。また肝臓の硬さや脂肪量を測定することができるフィブロスキャンやMRエラストグラフィーがあります。

血液検査

肝機能を調べる検査で、血液中のAST、ALT、ALP、アルブミン、プロトロンビン活性、血小板数などを調べます。その他、肝機能障害を引き起こす可能性がある疾患を否定するための検査を行います。

腹部超音波検査(エコー検査)

超音波を腹部にあて、肝臓の形や表面の状況、脂肪沈着の有無などを検査します。

フィブロスキャン

腹部超音波の類の検査で、肝臓に振動を与え、硬さや脂肪量を測定します。

CT検査

X線を使って脂肪肝の進行度などを検査します。

MRI検査

肝脂肪の量や、肝硬変の有無、肝臓の腫瘍の有無などを検査します。

MRエラストグラフィー

MRIを用いて、肝臓の硬さや脂肪量を測定します。

非アルコール性脂肪肝は健康診断や人間ドックの血液検査で判明することも多く、自覚症状が見られない病気です。気付いたら進行していたということも多いため、気になる方はかかりつけ医や消化器専門医に相談をしましょう。

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非アルコール性脂肪肝についての総まとめ

「皮膚や目に黄疸がみられる」「最近、足がむくむ」など気になる症状がみられたら、まずはセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA