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更新日:2023年10月4日 1,985PV
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腰部脊柱管狭窄症|専門医監修の解説とセルフチェック

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監修者

気になる症状

腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、腰回りの背骨の中にある「脊柱管」という神経の通り道が「狭窄(せまくなること)」する病気です。

脊柱管が狭くなることによって神経が圧迫されるため、足腰が痛んだりしびれたりすることがあります。

「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」という歩行と休息を繰り返す特徴的な症状があるので、違和感を覚えたら専門の医療機関を受診することをお勧めします。

今回は腰部脊柱管狭窄症の症状を中心に、原因や治療・検査について解説をします。

歩き始めると痛みが悪化し、しばらく休むと軽減する間欠性跛行が特徴的な症状

歩いているときや立っているときに、お尻から足にかけて痛みやしびれが生じるのが主な症状ですが、間欠性跛行といわれる歩き始めると症状が悪化し、しばらく前屈みになって休むと痛みが軽減するといった特徴的な症状があります。
「散歩や運動は健康にいいから」と痛みに逆らって運動を続けると、かえって症状を悪化させることがありますので注意をしましょう。
また、脊柱管内部の圧迫箇所により症状が異なりますので、部位ごとに解説をします。

馬尾型(ばびがた)

脊柱管の中心部には、馬尾と呼ばれる神経の束が通っており、この神経そのものが圧迫を受けているタイプを馬尾型といいます。

●両足・お尻・陰部の異常感覚
馬尾型の脊柱管狭窄症では、「痛み」を感じることはほとんどありません。
両足やお尻・陰部にしびれや異常な感覚が生じ、歩行することでその症状が悪化します。

●膀胱直腸障害
足のしびれなどの各症状がさらに重篤化すると、排尿障害や排便障害などの症状に陥ることがあります。
これらをまとめて膀胱直腸障害と呼びます。

神経根型(しんけいこんがた)

神経の付け根のことを神経根といいますが、その部分が圧迫されるタイプを神経根型といいます。
左右に付け根がありますが、基本的には片側だけで圧迫が起こります。 脊柱管狭窄症の約7割はこのタイプだといわれています。

●足の痛み
馬尾型に比べて、神経根型は「痛み」が特徴的な症状です。
片側だけで発生するため、片足の太ももから足首にかけての放散するような痛みを自覚することが多くなります。
症状が悪化すると、下肢の筋力低下を認めることがあります。

混合型

混合型は、呼んで字のごとく「馬尾型と神経根型の両方」の症状を示します。 神経の束本体と、神経の付け根の両方に圧迫が起こるため、症状も両型を複合した症状になります。

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腰部脊柱管狭窄症の原因は加齢や生活習慣

加齢

腰部脊柱管狭窄症の主な原因は加齢です。
加齢によって脊椎が変形したり、椎間板が腫れやすくなったり、背骨と背骨の間にある黄色靱帯という靭帯が分厚くなったりすることで生じます。

そのため高齢者の発症が多く、50代頃から発症する人が増え始め、60〜70代に最も多くなります。
高齢者の実に10人に1人は腰部脊柱管狭窄症を患っているといわれており、その数は推定で580万人と言われています。
特に若いときに重いものを持つなど腰への負担が大きい仕事をしてきた経験があるとリスクが上昇するといわれています。

腰部脊柱管狭窄症を引き起こす病気

腰部脊柱管狭窄症は他の病気が原因となる場合も多く、「腰椎椎間板ヘルニア」「変形性腰椎症」「腰椎分離症」「腰椎すべり症」などが原因となります。
これらは背骨自体や背骨と密接に関わっている部位の病気であるため、特に腰椎すべり症は体が柔らかい中学生の頃から発症することもあります。
高齢者に限らず若い人でも症状が強いときは無理な運動は避けた方が良いことは言うまでもありません。

生活習慣

脊柱管狭窄症は生活習慣と密接な関係があり、特に姿勢や動作、体の柔らかさ、運動不足、過労、体重の増加、ストレスなどによって引き起こされます。

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まずは薬で治療し、重症化すると手術を必要とすることがある

進行度によって治療法が異なりますが、症状が軽い場合は薬での治療や局所麻酔剤などのブロック注射、腰周りを安静にしコルセットの装着、リハビリ治療が中心となります。
ただし、薬によって症状が改善しない場合や痛みやしびれが強い場合、下肢の筋力の低下や排尿・排便障害がある場合には手術を行います。
手術には除圧術と固定術がありますが、除圧術は背中側の黄色靭帯などを切除して脊柱管を広げ脊柱管の圧迫をなくす手術法で、固定術は歪んだ背骨をスクリューやロッドなどで固定する手術法です。

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主に問診やX線検査を行い、必要に応じてMRI検査やCT検査を

問診

問診では腰痛や下肢の痛みやしびれの有無などを確認します。 また、症状の中に間欠性跛行と疑われるものがあるかどうかは非常に大事なポイントです。
合わせて、下肢の筋力低下や排尿・排便の異常などの症状の有無も確認します。

X線検査

背骨の状態を確認し、腰部脊柱管狭窄症以外の別の病気がないか、骨折がないか、体の動きによる腰椎の不安定さなどの症状がないかどうかを検査します。

MRI検査

脊柱管がどの程度狭くなっているのか、椎間板や関節・靭帯の状態、神経への圧迫の程度などを検査します。

CT検査

MRIでの検査が難しかったり、手術前に症状や背骨の状態を確認したい場合などに用いられます。

問診の結果によって、X線検査・MRI検査・CT検査を使い分けて行うことが多いです。
腰部脊柱管狭窄症が命に関わることはほとんどありませんが、痛みやしびれを我慢していると、病気が進行し日常生活に支障をきたします。
気になる症状を感じたら、まずは整形外科を受診しましょう。

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腰部脊柱管狭窄症についての総まとめ

「足に痛みやしびれがある」「歩いていると痛みが増し、しばらく休むと痛みがなくなる」など気になる症状がみられたら、まずはセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA