中日新聞 地域医療ソーシャルNEWS
  • Facebook
  • Twitter
  • Line
更新日:2023年6月27日 4,504PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

アトピー性皮膚炎|専門医監修の解説とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
共同編集

気になる症状

アトピー性皮膚炎は、発疹やかゆみの症状がなかなかおさまらなかったり、良くなったと思っても再発を繰り返すため、身体的にも精神的にも非常に負担の大きい病気です。

直接的な原因は、皮膚のバリア機能の低下によって身体の免疫機能が過剰に反応したり、神経過敏になることや、もともとアレルギーを起こしやすいアトピー素因をもつことなどがあげられます。

「大人になれば自然に治る」と認識されがちな病気ですが、近年は大人になっても治らなかったり、大人になってから再発または突然発症するケースが増えています。

今回は、アトピー性皮膚炎の原因をはじめ、代表的な症状や治療方法について解説していきます。

アトピー性皮膚炎の原因は「皮膚のバリア機能の低下」と「アトピー素因」

アトピー性皮膚炎とは、発疹やかゆみの症状がなかなかおさまらず、良くなったと思っても再発を繰り返したりする皮膚の病気です。
原因としては「皮膚のバリア機能が弱いもしくは低下している」「アトピー素因」の大きく2つがあげられます。

皮膚のバリア機能の低下

皮膚は外側から表皮・真皮・皮下組織(脂肪組織など)の3層で成り立っていますが、さらに表皮の一番外側の角質層では、外部からの異物の侵入や体内の水分が蒸発し皮膚が乾燥するのを防ぐといったバリア機能を担っています。
この角質層のバリア機能が低下すると、体内に異物が侵入しやすくなったり水分量が低下することなどがおこり、身体の免疫機能が過剰に反応したり、神経過敏になって発疹やかゆみを引き起こします。
また、かゆみの症状が出て掻きむしることで角質層にダメージを与え、皮膚のバリア機能をさらに低下させてしまうため、症状もさらに悪化していく悪循環に陥ってしまいます。

アトピー素因

アトピー素因とは一言で言うと「元々アレルギーを起こしやすい体質」を意味しており、以下のような場合はアトピー素因を持っていると言われています。

1)自分自身や家族で気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患にかかったことがある
2)アレルギー反応と密接な関係がある抗体であるIgE抗体を産生しやすい体質である

目次

慢性的な発疹やかゆみを繰り返すアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、手足の関節や顔周りなどの皮膚の柔らかい部分で症状が出やすくなっています。症状の出やすい部位と症状は次の通りです。

症状が出やすい部位

左右対称でおでこ・目・口・耳の周り・首・手や足の関節の内側に分布することが多いです。

特徴的な症状

・かゆみを伴う湿疹
・赤みがあり、じゅくじゅくしている。引っ掻くと液体が出てくる
・ささくれだって皮が剥ける
・長引くとかさぶたのようにごわついて硬く盛り上がる

目次

長期的に症状を抑えるためのアトピー性皮膚炎の2つの治療法

アトピー性皮膚炎は、薬を塗ったり飲んだりしてすぐに完治するものではありません。
また、何かしらの治療によって一時的によくなることはあっても、患者さんの生活環境や生活習慣によっては再発してしまうことがあります。
そのため皮膚科で治療を行う場合は、症状がないか、仮に症状があったとしても軽度で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としないことを目標にします。

症状をいち早く抑える「寛解導入(かんかいどうにゅう)療法」

湿疹やかゆみの症状が重い場合、無意識にかきむしってしまいさらに皮膚が傷ついてしまうため、いつまで経っても良くなりません。
初期の対応としては、保湿剤の外用に加え、症状を抑える効果の強い「ステロイド外用薬」や「免疫抑制外用薬」、また最近は「外用ヤヌスキナーゼ阻害薬」を使用した治療が一般的です。

さらに中等症以上の難治例においては、免疫抑制薬(内服)や光線療法の併用に加え、生物学的製剤(注射)やヤヌスキナーゼ阻害薬(内服)など新しい薬剤を用いて全身療法を強化します。
また心理的アプローチも重要です。

一度落ち着いた症状が再発する前に普段から症状を抑える「寛解維持(かんかいいじ)療法」

アトピー性皮膚炎は発疹が無くなり、かゆみが一時的におさまったとしても、再発してしまうということが少なくありません。
そのため、いかに良い状態を維持するかが大切です。
最近は外用剤の塗り方も注目されており、症状が悪くなった時のみに外用するリアクティブ療法ではなく、症状が落ち着いた後、定期的に抗炎症外用剤を使用するプロアクティブ療法が標準となってきました。
プロアクティブ療法は結果的に抗炎症外用剤の総量を減らすことができます。
また生物学的製剤(注射)も維持療法としても使用することができます。

これら2つの治療方針の根本には、肌のバリア機能の保持やアレルギーが起こりにくい環境を整える「日頃のスキンケア」が重要です。
日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることや、生活環境からアレルゲンを除去し、過度な刺激が皮膚に当たらないようにしなければいけません。

目次

問診と視診に加えて血液検査を行う場合も。

アトピー性皮膚炎では問診と視診に加えて血液検査を行うことで具体的な治療計画が立てられます。血液検査の指標としてはTARC、好酸球数値、IgEなどがあります。

TARC値

アトピー性皮膚炎に特有の検査となり重症度を測定します。

好酸球数値

白血球の仲間である好酸球は一般的にアレルギー疾患で高くなるため、アレルギー体質があるかどうかを測定します。

総IgE抗体値

ダニや食物などのアレルゲンに反応するIgE抗体は、重症化すると高くなるためアレルギー体質があるかどうかを測定します。

特異IgE抗体値

ダニや食物に特異的に反応するIgE抗体などを測定する検査で、ダニ、スギ、小麦、卵白、牛乳、大豆、カンジダ、マラセチアなどの特異IgE抗体値を測定します。

アトピー性皮膚炎は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返し、長引いてしまうがゆえに心身ともに負担が大きく、治療意欲がわかないこともあります。
しかし、現在は様々な治療に関するアプローチがありますので、一人で悩まず、気になる症状がみられたら早期に皮膚科を受診しましょう。

目次

アトピー性皮膚炎についての総まとめ

「最近体がかゆい」「皮膚が乾燥する」など気になる症状がみられたら、まずはセルフチェックをしてみましょう。

目次
画像提供:PIXTA