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更新日:2023年6月27日 786PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

脳卒中ケア |看護師監修のケア解説とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 河合 正貴
  • 岐阜県総合医療センター 慢性脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

気になる症状

脳卒中は脳血管の異常により生じる病気で、治療後も何らかの後遺症の残ることが多くあります。

現在、脳卒中の治療を受けている方や、退院して療養している方とご家族に向けて、看護の視点から療養生活に役立つ情報をお届けします。

脳卒中とは?

脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、脳が障害を受ける病気です。脳卒中を発症すると、障害を受けた脳の部位によって身体機能や言語機能が損なわれたり、場合によっては死に至ることもあります。脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、脳の血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」の3種類があります。

脳卒中が軽症の場合は、急性期病院を退院してすぐに社会復帰できます。しかし、運動障害などが残った場合、回復期リハビリテーション病院へ転院することもあります、身体・認知機能の回復を図ってから、自宅に帰ったり、施設、療養型病院へ入ることになります。

目次

脳卒中の後遺症について

脳卒中の後遺症は、損傷を受けた脳の部位によって多岐にわたります。退院後はこれらの後遺症をサポートできるような住環境や福祉用具を整え、できる限り自立した生活をめざしていきます。主な後遺症は以下の通りです。

運動障害

損傷した脳と反対側の体が動かしにくくなり、手指の細かい動きや足首の動きが困難になります。

感覚障害

触っている感覚が鈍くなる、わからない、という症状があらわれ、しびれや痛みを伴う場合もあります。

視野障害

視野の左右どちらかが見えなくなる「半盲」や、部分的に見えなくなる「視野欠損」の症状があらわれます。物が二重に見える場合もあります。

嚥下(えんげ)障害

舌や喉の動きが悪くなったり、飲み込む筋肉が落ちることにより、飲食物をうまく飲み込めなくなります。誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしやすくなります。

失語症・構音障害

失語症は、「読む、書く、話す、聴く」がうまくいかなくなる症状です。構音障害は、声を発するときに、不規則・不明瞭な話し方になる障害です。

高次脳機能障害

高次脳機能障害は、注意障害、記憶障害、失語症、失行症(体は問題ないのにうまく動かせない)、失認症(知能はあるが物事を認識できない)などの症状全体を指します。

排尿障害

尿を溜めたり、排出したりする機能に障害が起きます。

感情障害

軽度の刺激で笑ったり、泣いたりして、感情の制御ができない状態になります。感情失禁とも呼ばれます。

うつ

脳の特定の部位を損傷することにより、うつ病を発症するといわれています。感情を調整する前頭葉が障害を受けることで発症しやすくなります。

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再発・悪化予防のケアについて

脳卒中は再発しやすい病気です。予防しないと、3人に1人は5年以内に再発するといわれています。生活習慣を見直して、再発を予防しましょう。

血圧の管理

血圧が高いほど脳卒中の危険性は高まります。毎日、血圧を測る習慣をつけましょう。

また、家の中の温度変化が大きいと、血圧が変動しやすくなります。冬場の入浴では、脱衣所や風呂場を温めてから入浴するなどの工夫をしましょう。お湯の温度も41℃以下を目安にして、安全な入浴を心がけましょう。

禁煙

禁煙は絶対に必要です。タバコを吸うことにより、血液は濃くなり、血圧も上昇して動脈硬化が進み、脳卒中を起こしやすくなります。

不整脈に注意する

不整脈は、脈が速すぎたり遅すぎたり、脈のリズムが一定ではなかったりすることです。とくに、不整脈の一種である「心房細動」があると、心臓に血栓ができやすく、それが脳に飛んで脳梗塞になるリスクがあります。動悸や胸の苦しさなど不整脈の症状が出たら、速やかに主治医に報告しましょう。

食事を管理する

偏りのある食生活は、生活習慣病を悪化させ、脳卒中の再発につながります。「塩分を摂りすぎない」「野菜を多く摂る」「脂質を摂りすぎない」をポイントに、毎日の食生活を見直しましょう。また麻痺がある方は、必要時自分にあった自助具(動作の困難を補うための道具)を用意しましょう。嚥下障害のある方は誤嚥を防ぐような料理を用意し、安全な姿勢で食べるよう心がけましょう。

口の中を清潔にする

口の中の清潔は、歯や口の病気を予防するとともに、「食べる・かむ・飲み込む」などの機能を維持するために必要なケアです。

運動をする

片麻痺などの障害があると家の中で過ごしがちですが、再発予防のために適度な運動は欠かせません。簡単な体操や散歩などで体を動かすよう心がけるようにします。

薬を飲み忘れない

血圧を下げる薬や血液をサラサラにする薬など、脳卒中後には様々な薬を内服することがあります。薬を飲み忘れることにより再発のリスクは高まります。処方された薬は正しい方法で内服しましょう。

「脳卒中予防十か状」「脳卒中克服十か状」を活用

公益社団法人日本脳卒中協会では、脳卒中の予防および発症後の再発予防のための「治療の継続」と「リハビリテーションの継続」の重要性を訴えています。日本脳卒中協会が作成した「脳卒中予防十か状」、「脳卒中克服十か状」を参考にしましょう。

◯脳卒中予防十か条
◯脳卒中克服十か条

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無理なく介護を続けるために

脳卒中の多くは、長期にわたってお世話をしていくことが必要になります。そのため、介護する側の負担はかなり大きく、家族が介護うつになるケースも珍しくありません。ここでは、ご家族が無理なく介護を続けられるコツをご紹介します。

介護保険サービスを上手に活用する

在宅介護を続けるには、介護保険サービスの活用が不可欠です。入院中にケアマネジャー(介護支援専門員)を紹介してもらい、要介護認定の手続きやケアプランの作成を依頼しましょう。ケアプランの内容に基づき、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーション、デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)などを組み合わせ、必要なサービスを受けていきます。

日常生活の自立をめざす

身体機能が低下し日常生活が不自由になった場合、訪問看護師や訪問リハビリテーションスタッフの協力を得て、一人でできることを増やしたり自立した生活に向けての訓練を行いましょう。本人の自立が進めばそれだけ介護の負担軽減につながります。

■自立をめざす訓練の一例
・ベッドから起き上がる練習
・トイレ、入浴、着替え、食事などの動作の練習
・車いすへ移乗する練習
・家の中を安全に移動する練習

「レスパイトケア」のサービスを利用する

介護は一人で行うものではなく、地域の人たちと協力して行うもの。ケアマネジャー、訪問看護師など周囲に協力者をつくり一人で抱え込まないようにすることが大切です。

また、介護に疲れを感じたら、「レスパイトケア」のサービスを利用しましょう。レスパイトとは介護者が一時的に介護を離れてリフレッシュすることです。介護を休むことによって、心身の状態を整えることができます。 主なサービスをご紹介します。

■介護保険で受けられる「レスパイトケア」のサービス
●デイサービス(通所介護)
 朝から夕方までの日中に高齢者の介護を行うサービス。
●ショートステイ(短期入所生活介護)
 短期間だけ施設に宿泊し介護を受けるサービス。
●ホームヘルプ(訪問介護)
 自宅で受ける介護サービス。

■医療保険で受けられる「レスパイトケア」のサービス
●レスパイト入院(介護家族支援短期入院)
 一時的に在宅療養・介護の継続が困難であると医師が判断した場合に利用できる短期入院サービス。

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脳卒中ケアについての総まとめ

看護の視点から、脳卒中を患い在宅療養する場合のケアなどについて解説しました
最後に、ポイントをまとめます。

退院後も長く続く脳卒中の療養生活。日常の生活で困ったことがあれば、ためらうことなく、主治医やケアマネジャーなどに相談しましょう。
最後に脳卒中を予防するためのセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA