ストーマとは?
消化管や膀胱の機能が著しく悪化したとき、がんなどの手術で膀胱や尿管、腸を切除したときなどにあらたな排泄路をつくるのが、ストーマです。人工肛門と人工膀胱の2種類があり、ストーマを造設した人のことを「オストメイト」と呼びます。
ストーマを造設した後は、ストーマ装具と呼ばれる袋に排泄物を溜めていきます。ストーマ装具の装着や交換を上手に行うことによって、行動の制限なく、仕事や運動、旅行も含めて、従来と変わらない生活を過ごすことができます。
なお、大腸がんなどの手術では、腸を休ませるために一時的にストーマをつくり、その後、閉鎖して、肛門から排便できるようにすることもあります。
日常的なストーマケアについて
ストーマをつくると、排泄物やストーマ装具の管理が必要になります。ストーマ装具は、排泄物を溜めるストーマ袋と、皮膚に固定する面板(皮膚保護剤)からなります。ストーマ袋と面板が一体型のものと別々になっているものの2タイプがあります。
排泄物の管理
排泄物はパウチの中に溜まります。排泄物は溜め過ぎず、ある程度溜まったら、パウチの先端の栓やクリップを開けて、排泄物をトイレに流します。排出口に付着する部分は、トイレットペーパーでしっかりと拭き取るようにしましょう。においの防止につながります。
公共施設には、オストメイト専用トイレが用意されているところもあるので、外出時に利用しましょう。
パウチ・面板の張り替え
パウチと面板の交換の頻度は、装具によって異なりますが、目安は3〜5日に1回程度です。また、漏れたり剥がれた場合は、その都度、貼り替えます。
ストーマ装具の交換方法の一例
1)石鹸を使って流水で手を洗う
2)お湯、石鹸または弱酸性洗浄料、剥離剤、ごみ袋、ストーマ装具を用意する
3)剥離剤を使用し皮膚を刺激しないように、装具の縁を静かに少しずつ剥がしていく
4)石鹸をよく泡立て、ストーマの周囲の皮膚をやさしく丁寧に洗う
5)シャワーなどで石鹸を完全に落とす。水分を拭き取り、よく乾かす
6)皮膚を観察する
7)剥がした装具の皮膚接着面を観察し、ふやけ方や溶け方を確認する。溶け具合などを装具交換時期の目安とする
8)ストーマに合わせて装具を貼りつけ、周囲を抑えて密着させる
9)下端のプレートを手前に折り、ストーマ袋の口を閉める
(がん情報サービス「大腸がん手術後のストーマケア」より)
ストーマのトラブルと対処法について
ストーマケアで多くあるのは、ストーマ装具からの便や尿の漏れ、ストーマ周囲皮膚のかぶれ、ただれのトラブルです。
ストーマ装具からの便や尿の漏れ
ストーマ装具が密着していなかったり、正しく使用できていないと、ストーマ装具から便や尿が漏れることがあります。ストーマ周囲のお腹にしわがあったり、ストーマの周囲にくぼみがあったりすると、装具が密着せず、便や尿の漏れが起こりやすくなります。排泄物の性状やお腹の形、ストーマの形に合わせた装具を使用することが大切です。
ストーマ周囲皮膚のかぶれ、ただれ
ストーマ周囲皮膚のトラブルには、「排泄物の接触」「面板が合わない」「装着を剥がすときの刺激」「発汗による細菌感染」など、さまざまな原因があります。何が原因で皮膚がかぶれてしまったのかを明らかにし、その原因を取り除くような対処が必要です。
1)排泄物の接触が原因の場合---ケアの方法
・面板の交換時には、ストーマ周囲の皮膚をやさしく洗う
・面板にあけるストーマ孔は、ストーマより1〜2mm大きめにカットし、小さすぎたり大きすぎたりしないように気をつける
・ストーマ装具を貼った後は、装具が皮膚に密着することように、上からしっかり押さえる
2)装着を剥がすときの刺激が原因の場合---ケアの方法
・急いで剥がすと皮膚の表面を傷つけるので、剥離剤を使用しストーマ装具をゆっくり剥がす
社会的なサポートについて
ストーマをつくった方が快適に生活できるように、いろいろなサポート体制が用意されています。上手に活用していきましょう。
助成制度
永久的なストーマをつくった場合、身体障害の認定が受けられます。認定されると、ストーマ装具の給付、公共交通機関の割引、携帯電話料金の割引、税金の減免などを受けることができます。お住まいの市区町村の障害福祉係の窓口でお問い合わせください。
ストーマ外来
病院には、ストーマケアのことを相談できるストーマ外来を開設しているところが増えています。ストーマ装具の使い方はもちろん、便や尿の漏れ、スキントラブルなど、気になることがあれば、いつでも気軽に相談できます。
患者会
ストーマを持つ人とその家族の会が、全国にはたくさんあります。ここでは悩みや不安を持ち寄り、より良い解決策を考えることができます。もっとも大きな患者会は、「公益社団法人日本オストミー協会」です。まずはインターネットで検索してみてください。
ストーマケアについての総まとめ
看護の視点から、ストーマケアの主なポイントについて解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。
ストーマの違和感や困りごとがある場合、自己判断せずに医師や看護師に相談することが大切です。
ストーマに関わる問題について、セルフチェックしてみましょう。