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更新日:2023年6月27日 1,377PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

褥瘡ケア|看護師監修のケア解説とセルフチェック

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  • 中日新聞LINKED
監修者

気になる症状

褥瘡(じょくそう)は、寝たきりなどにより起こる皮膚の障害。「床ずれ」ともいわれます。

現在、長期療養中で寝ていることの多い方やお世話をしているご家族に向けて、看護の視点から役立つ情報を紹介します。

褥瘡(じょくそう)とは?

褥瘡とは、寝たきりなどにより、骨の突出したところとベッドや体重で長い時間圧迫されている皮膚の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚にキズができてしまうことです。圧迫が長く続くと、微小血管が閉塞して皮膚への血流が乏しくなり、その部分の皮膚や骨までの組織が死んで(壊死)しまい、褥瘡になります。圧迫のほか、摩擦(衣服や寝具とのこすれ)、ずれ(車いすへの移動や電動ベッドの背上げなど)、湿潤(発汗や失禁)によっても、褥瘡ができます。

褥瘡ができる場所はさまざまですが、仰向きに寝ている場合はお尻やかかと、後頭部、横向きに寝ている場合は肩や腰骨、椅子に座っている場合はお尻や背中にできやすいといわれています。

褥瘡のできはじめは、皮膚が赤くなり、水疱(水ぶくれ)や皮めくれができます。その後、ひどくなると皮膚がめくれたところから血やうみが出て感染を起こしたり、かさぶたのような硬い皮膚になります。さらに悪化すると、傷口が深くなり、広がり、骨が見えるようになります。

目次

褥瘡になりやすい人と疾患について

褥瘡になりやすいのは、自分で寝返りができず長期間寝たきりになっている方です。動かないことにより筋肉が減っていき骨が突出しやすくなります。さらに、加齢によって皮膚が弱くなっていたり、食事量が減り栄養状態が悪くなっていると、圧迫だけでなく摩擦やずれなどの刺激が繰り返されている場合も褥瘡になりやすくなります。

事故や癌などで脊髄が損傷を受け、麻痺のある方や歩行ができず車いすで生活する時間が長い方も褥瘡になることがあります。

そのほか、褥瘡になりやすいため注意しなければならない病気として、以下の疾患があります。これらの病気で療養している方はとくに注意が必要です。

褥瘡発生の危険因子として特に注意すべき疾患

●うっ血性心不全
●骨盤骨折
●脊髄損傷
●糖尿病
●脳血管疾患
●慢性閉塞性肺疾患

褥瘡発生の危険因子として考慮すべき疾患

●悪性腫瘍
●アルツハイマー病
●関節リウマチ
●骨粗鬆(こつそしょう)症
●深部静脈血栓症
●パーキンソン病
●末梢血管疾患
●尿路感染症
(日本褥瘡学会ホームページより)

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褥瘡ケアの方法について

褥瘡が疑われる場合、できるだけ早く主治医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。褥瘡が発生した原因や傷の深さなどによって、さまざま治療が行われます。主な治療法やケアの方法をご紹介します。

洗浄する

傷とその周りの皮膚をきれいにすることは、褥瘡ケアの重要なポイントです。傷とその周りの皮膚の汚れやばい菌を、十分な量の温かい水道水を用いて洗い流します。洗う頻度は傷の状況によってさまざまですが、1日1回程度が目安です。

塗り薬を使う

創部の感染(細菌が増えて炎症が起こっている状態)を抑える薬、創部の治癒(肉芽形成、上皮化)を促す薬、保湿により創部を保護する薬など、さまざまな塗り薬があります。

ドレッシング材を使う

ドレッシング材とは、傷を覆う医療用材料のことです。傷を覆うことで、痛みが軽減し外部からの刺激や細菌の汚染などを防ぎます。近年は傷を治すための最適な環境(湿潤環境)を維持できる、高機能なドレッシング材が数多く開発されています。

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褥瘡の予防について

褥瘡ができると治癒まで時間がかかるので、褥瘡ができる前に、しっかり予防することが大切です。長期療養中の家族をお世話している方は、主治医や看護師に相談しながら、適切に予防していきましょう。主な予防方法をご紹介します。

体の向きを変える

長い時間、同じところの圧迫を避けるため、定期的に体位変換を行います。体位変換はベッドからの転落や摩擦・ずれをなくすため、2人で行うのが理想ですが、1人で行う場合は体の部分を少しずつ移動させます。
体位保持クッションなどを使用し、安楽な姿勢にします。
交換の頻度は個人差がありますが、基本的に2時間を超えない範囲で行います。ただし、体圧分散寝具を使用する場合、体位変換の間隔は4時間を超えない範囲で行ってもよいとされています。

寝具を工夫する

寝たきりで体を動かせない方や、骨の突出がある方の圧迫対策として、 ウレタンフォームマットレスや体圧分散効果の高い高機能型エアマットレスなどの体圧分散寝具を使用します。体圧分散寝具を使うと、「沈み込み」や「包み込み」により骨の突出部の圧力を低くしたり、「接触部位を変える」ことによって接触圧を低くすることが期待できます。

栄養をつける

栄養状態が悪くなると、褥瘡になりやすくなります。日頃から体重の減少、食事摂取量などをチェックするようにしましょう。血液検査でわかる血清アルブミン値が低下している場合も、低栄養状態が疑われます。低栄養の場合は、看護師や栄養士に相談し、食事の改善に取り組みます。

スキンケア

褥瘡を防ぐには、常に皮膚を健康な状態に保ち、バリア機能を維持することが必要です。具体的には入浴や洗浄により皮膚を清潔にした後、保湿剤を塗って皮膚の乾燥を防ぎます。乾燥した皮膚はトラブルを起こしやすいので、保湿は欠かせないケアになります。

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褥瘡ケアについての総まとめ

看護の視点から、褥瘡ケアや予防方法などについて解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。

褥瘡は早期発見が重要です。
褥瘡になりやすい状態になっているかどうか、こまめにセルフチェックするようにしましょう。

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画像提供:PIXTA