中日新聞 地域医療ソーシャルNEWS
  • Facebook
  • Twitter
  • Line
更新日:2023年6月26日 672PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

慢性呼吸器疾患ケア|看護師監修のケア解説とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 宮島 栄里
  • 社会医療法人 大雄会 慢性呼吸器疾患看護認定看護師

気になる症状

慢性呼吸器疾患は、治療や経過が長期にわたる呼吸器の病気の総称で、息切れや咳、痰などの症状が長く続きます。

現在、在宅療養している方や、これから在宅療養を始める方とご家族に向けて、看護の視点から役立つ情報をお届けします。

慢性呼吸器疾患とは?

慢性呼吸疾患には多岐にわたる疾患があります。主な疾患をあげてみましょう。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患は、タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することにより生じた肺の炎症性疾患です。喫煙習慣を背景に中高年に発症することが多く、「肺の生活習慣病」ともいわれています。

間質性肺炎・肺線維症

間質性肺炎・肺線維症は、肺胞の壁に炎症や損傷が起こる病気です。次第に壁が厚く硬くなって(繊維化)、血液中に酸素が取り込まれにくくなります。

気管支喘息(喘息)

気管支喘息(喘息)は、空気の通り道(気道)に炎症が続き、気道が敏感になり、発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。

肺炎

肺炎は、細菌やウイルスによって、肺に炎症を起こす病気です。

気管支拡張症

気管支拡張症は、何らかの原因で気管支(鼻や口と肺をつなぐ管)が広がって戻らなくなる病気です。気管支の広がった部分には分泌物がたまりやすく、感染をくり返します。

目次

日常生活の心がけについて

慢性呼吸器疾患になると、息切れや呼吸困難感、咳、痰などの症状に悩まされることになります。これらの症状を改善し、生活の質を高めることが療養生活の基本です。主なポイントをご紹介します。

禁煙する

タバコは呼吸器疾患を悪化させる原因です。絶対に、禁煙を守りましょう。

生活環境を整える

ダニ、ハウスダスト、カビなどが原因で気管支喘息を患っている場合、室内の環境整備がとても重要です。しっかり掃除して、身の回りのアレルギーの原因を減らし、室内環境を整えます。また、こまめに窓を開けて、換気を心がけましょう。

息切れが強いときはらくな姿勢をとる

息苦しくなったら、あわてないことが重要。椅子に座り、机に両肘をついて前かがみになるような姿勢をとると、呼吸がらくになります。椅子がない場合は、両手を膝につき、壁によりかかるようにすると、らくになります。

便秘を予防する

便秘になると、排便時に力むため規則正しい呼吸ができず、呼吸困難の症状が増強するといわれています。水分を多めにとり、軽い運動を行って、便秘を予防しましょう。

心のケアと十分な睡眠を心がける

不安は呼吸困難を増強させるといわれています。精神的なストレスを溜め込まないように注意しましょう。また、熟睡できるように寝室の環境を整え、夜はしっかり休みましょう。

目次

呼吸リハビリテーションのすすめ

呼吸器疾患の症状を軽減するために行うのが、呼吸リハビリテーションです。息苦しさの軽減のほか、筋力、体力の向上が得られ、体を動かすときの呼吸がらくにできるようになります。また、急性増悪の予防にもつながります。主な方法について紹介します。

運動療法

筋肉が少ないと動くときに多くの酸素を必要としますが、筋肉を鍛えると使用する酸素が少なくなり、らくに動けるようになります。まずは歩く運動からスタートし、運動の種類を増やしていきます。症状が軽い場合には全身の持久力や筋力を高めるトレーニングを加えていきます。息切れが強い場合は、ベッドに腰掛けて足踏みなどをするのも効果的です。

呼吸訓練

気管を広げ、息切れを軽くするために、「口すぼめ呼吸」を習得します。口すぼめ呼吸は、鼻から息を吸った後、口をすぼめて長く息をはく呼吸法です。また、鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませる「腹式呼吸」も、横隔膜の動きをよくし、効率よく呼吸できます。

栄養療法

慢性呼吸器疾患は、呼吸をするだけでもエネルギーを多く消費します。栄養不足になりやすいために、「良質のタンパク質・カリウム・カルシウムを多く摂る」「やせ気味の場合は食事回数を増やす」「減塩する」「良質のタンパク質・カリウム・カルシウムを多く摂る」といったことを心がけます。

排痰法

痰が胸や喉の奥にへばりついているようで出しづらい場合、「ハフィング」を行ってから咳をすると痰が出やすくなります。「ハフィング」は、口を「ハ」の形にして、「ハッハッハッ」と強く、速く息を吐き出すことによって、呼気流速を高めて痰をだす方法です。

目次

在宅酸素療法について

血液中の酸素が不足している場合、酸素供給機器を使用して「在宅酸素療法(HOT)」を行います。在宅酸素療法には「息切れの改善」「心臓への負担の軽減」「運動能力の改善」「記憶力・注意力の低下予防」「再入院の予防」「生活を楽しむ」といった効果が期待でき、在宅療養の心強いパートナーです。また、医師の指示により酸素供給機器を使用することは、健康保険の適用になります。
在宅酸素療法では下記のことに注意します。

在宅酸素療法の注意点

1)吸入量と吸入時間を守る
酸素の量を勝手に上げたり下げたりせず、主治医の指示に従います。

2)月に1回、診察を受ける
保険適用のためには月に1回(原則)、診察を受ける必要があります。

3)火気に注意
酸素は燃焼を助けるガスなので、火気の取り扱いに注意します。

目次

慢性呼吸器疾患ケアのまとめ

看護の視点から、慢性呼吸疾患を患う方の在宅療養生活の注意点などについて解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。

慢性呼吸器疾患は本人が病気を理解し、体調や生活を管理することが大切です。自己管理する上で、困ったことがあれば、遠慮することなく主治医や訪問看護師などに相談するようにしましょう。

療養生活で見られる体調変化や、よくある悩みについてセルフチェックをしてみましょう。

目次
画像提供:PIXTA