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更新日:2023年6月27日 985PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

肝炎|専門医監修の症状とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 神部 隆吉
  • みよし市民病院 副院長・総合診療科内科部長(消化器科)

気になる症状

最近、発熱や全身の倦怠感、食欲不振、吐き気のような症状はありませんか?それらの症状に心当たりがある場合、もしかしたら肝炎のリスクが隠れているかもしれません。

今回は、肝炎について、専門医が病気の基礎知識をわかりやすく解説します。

肝炎とは

肝炎とは、肝臓の機能に障害が起きる疾患で、代表的な症状として発熱、頭痛、吐き気、腹痛、倦怠感、筋肉痛、食欲不振、黄疸(白眼の部分や皮膚が黄色く変色する)が挙げられます。
肝炎のうちウイルス感染が原因となっているものをウイルス性肝炎と呼び、人から人へうつることもあります。ウイルス性肝炎にはいくつか種類があり、種類によって原因となるウイルスや感染経路も異なります。
ウイルス性肝炎の種類については次の通りです。

A型肝炎

A型肝炎ウイルス(HAV)への感染を原因とします。主として水、食べ物を介して口から感染しますが、性交渉に伴う感染もあります。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)への感染を原因とする肝炎です。主な感染経路は、血液または体液の接触となります。具体的には、母子感染および輸血、性交渉などによる血液感染です。

C型肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)への感染を原因とする肝炎です。主な感染経路は、血液感染です。違法薬物の注射や、刺青・タトゥーを入れる際に滅菌していない針を使用して感染することが多いです。

D型肝炎

D型肝炎ウイルス(HDV)への感染を原因とする肝炎です。主な感染経路は、血液や体液の接触となります。
D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスがいなければ増殖することができないため、B型肝炎ウイルスに感染していなければ、D型肝炎になることはありません。

E型肝炎

E型肝炎ウイルス(HEV)への感染を原因とします。主として水、食べ物を介して口から感染しますが、輸血による報告もあります。

以上がウイルス性肝炎5種類となります。

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自覚症状の少なさが早期発見を妨げる

前章で肝炎の種類についてご説明しましたが、その中でも日本国内で患者数が多く、特に警戒するべきなのはB型肝炎とC型肝炎です。早期発見しなければ肝炎が慢性化したり、さらに深刻な疾患へと繋がるリスクがより高くなってしまいます。
このあとB型肝炎とC型肝炎の早期発見の重要性について詳しく解説していきます。

B型肝炎

B型肝炎は、感染してからの自覚症状が出るまでの潜伏期間が約1〜6か月と他の肝炎と比較して長く、また、感染してもずっと無症状のままという場合もあり、感染を自覚することが難しい肝炎です。前章でご説明したようにB型肝炎の主な感染経路は輸血や性交渉のため、早期発見ができなければ無自覚のうちに他の人へ感染を広げてしまう恐れもあります。またB型肝炎の患者さんの一部は、肝炎が慢性化(症状が6か月以上続くこと)してしまい「B型慢性肝炎」へと移行し、倦怠感や食欲不振などの症状が続くようになります。ただ、B型慢性肝炎に移行したからといって、必ず自覚症状があるわけではなく、無症状ではあるが、体内にB型肝炎ウイルスが残り続け、B型慢性肝炎の状態であることも少なくありません。
そしてB型慢性肝炎の恐ろしいところは、肝硬変や肝臓がんなどの命を失うことになりかねない重篤な疾患へと進行してしまう可能性がある点です。この重篤な疾患については、次章で詳しく解説をしますが、こういった命に関わるケースが存在するため、早期発見と早期治療が重要となってくるのです。

C型肝炎

C型肝炎は、患者さんの約75%が慢性化して「C型慢性肝炎」となると言われ、慢性化したまま治療を行わないでいると肝硬変や肝臓がんなどの重篤な疾患に進行してしまうこと可能性が非常に高くなります。しかし、このC型肝炎は自覚症状がないことがほとんどで、知らず知らずのうちに症状が進んでいることが多くなっています。実際に自覚症状が出るのは肝硬変になってしまってから、というケースも少なくありません。 肝硬変まで進行してしまうと、肝臓がんのリスクも急激に高くなるため、なんとしても早期発見することが望まれます。そのため、定期的に健康診断を行ったり、肝炎の症状に少しでも心当たりがあれば医療機関を受診するようにしましょう。

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肝炎から進行する重篤な疾患について

前章でご説明したように、肝炎は慢性化して進行が進んでしまうと、次のような命に関わる重篤な疾患に繋がる恐れがあります。

肝硬変

肝臓に線維組織と呼ばれる物質ができ、肝臓が硬質化してしまう疾患です。硬質化が進んでいるが、まだ肝臓が機能しているため自覚症状が現れない「代償期」と肝臓の機能に障害が起き自覚症状が現れる「非代償期」があります。肝硬変になった患者さんの死因は約60%が肝臓がんであることから、肝硬変は肝臓がんのリスクが高くなることが分かります。

肝不全

肝硬変の非代償期では、本来の肝臓の働きが十分行えなくなったり(肝機能障害)、他の内臓から肝臓への血流が障害されたり(門脈圧亢進)します。その結果、皮膚が青黒くなったり(皮下出血)、足が浮腫んだり(下肢の浮腫)、腹が張るようになったり(腹水)、異常行動をとるようになったり(肝性脳症)、皮膚が黄色くなったり(黄疸)、口から血を吐いたり(食道静脈溜破裂)することがあります。

肝臓がん

その名の通り肝臓にがんができてしまう疾患です。肝臓がんは、日本国内のがんによる死亡者数第5位となっており、発症時の死亡率は年々下がってきてはいるものの、未だに多くの人が命を落としてしまうのが現実です。<br> <br> 以上のように肝炎から繋がる疾患は命に直結するものが多いため、肝炎は早期発見が非常に重要なのです。

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肝炎の治療方法

この章では肝炎の検査方法と治療方法をご紹介します。

肝炎の検査方法

肝炎は血液検査で感染の有無を調べることができます。早期発見のため、まだ検査を受けたことのない方は、検査を受けるようにしましょう。

肝炎の治療方法

肝炎の治療には基本的に抗ウイルス薬を使用します。まずは、検査で原因となっている肝炎ウイルスの種類を識別し、それに有効な抗ウイルス薬を服用することで体内のウイルスの排除を目指します。
また、肝硬変や肝臓がんなどの合併症がある場合には、別途それらに有効な薬を使用し、治療にあたります。

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肝炎についての総まとめ

今回は肝炎について解説してきました。最後に重要なポイントを下記にまとめます。


発熱や全身の倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状がある方は肝炎の恐れがあるかもしれません。
少しでも心当たりのある方は、まずはセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA