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更新日:2023年6月27日 1,071PV
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摂食嚥下障害|看護師監修のケア解説とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者

気になる症状

摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害は、食べること、飲み込むことに関わる障害で、病気療養中の高齢者に多くみられます。

現在、食べたり飲んだりすることに困難を感じている方やご家族に向けて、看護の視点からわかりやすくアドバイスします。

摂食嚥下(せっしょく えんげ)障害とは?

摂食嚥下は、食物を認識してから口に運び、取り込んで咀嚼して飲みこむまでのことを指します。一般に、嚥下は、口の中のモノを飲みこみ、胃に送ることを意味し、摂食は食べることを意味します。飲みこむことだけに問題がある場合は「嚥下障害」ともいいます。

摂食嚥下障害は、 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)神経・筋、口腔・咽頭疾患などの病気や加齢による筋力の低下に伴って生まれる障害です。高齢者の場合、「加齢とともに歯が欠損する」「舌の運動機能が低下する」「咀嚼(そしゃく)能力が低下する」「唾液の分泌が低下する」「口腔感覚が鈍くなる」「咽頭への食べ物の送り込みが遅くなる」などの機能的な衰えにより、摂食 嚥下障害を起こしやすくなります。

目次

摂食嚥下障害のリスクについて

摂食嚥下障害になると、食べものなどがうまく飲みこめず、いくつかの問題が生じることがあります。

誤嚥(ごえん)性肺炎

もっとも注意すべきリスクは、誤嚥性肺炎です。これは誤って食べたものや唾液が、気管支や肺に入ることで生じる肺炎です。

食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。しかし、この機能が衰えると、気管に入り込んでしまった食べ物を排出できず、食べ物と一緒に口の中の細菌が肺に入り込んでしまうことがあります。

誤嚥性肺炎になると、発熱、激しい咳、呼吸の苦しさ、肺雑音などの症状が現れます。ただし、高齢者ではこうした症状が現れにくく、元気がなくなったり、食欲がなくなって、肺炎だとわかることも多くあります。誤嚥性肺炎で怖いのは、再発を繰り返すことです。抗菌薬治療を繰り返すうちに、薬への耐性菌が発生し、体力が低下し、呼吸状態が悪くなって命を失うこともあります。

窒息

食べ物が気管に入ってしまう誤嚥などによる窒息は、乳幼児と高齢者に多く発生します。高齢者では、餅や肉塊などの食物による気道内異物が多く生じます。また義歯や薬の包装容器による誤嚥事故(食道異物)の報告も多数あります。

低栄養・脱水症状

嚥下障害により、食べられる量や水分量が減ると低栄養や脱水を引き起こします。体を作るための栄養が不足してしまうと、飲み込みに使う筋肉を始め、全身の筋力が低下し体と心を弱らせる引き金となります。中でも低栄養と脱水症状は同時に起こることがあり、重症化すると大変危険です。

QOL(生活の質)の低下

食べることは、生きる上で大きな喜びです。安全に「食べたいもの」を食べることができなくなると、QOL(生活の質)や生きる気力が大きく低下してしまいます。

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摂食嚥下障害のケアについて

摂食嚥下障害のある方に対しては、必要な食べ物を安全に食べられるような介助が必要です。その際、とくに注意したいのは、誤嚥の防止です。ここでは、誤嚥を防ぐために必要なケアのポイントを解説します。

食べもの、飲みものの形態を工夫する

噛む力や飲み込む力に合わせて、飲み込みやすい食事を準備します。 やわらかい煮物やあんかけなど、とろみのついた食べものは、噛みつぶしたり飲み込んだりしやすく、誤嚥のリスクが低くなります。さらに摂食・嚥下障害が進むと、ミキサー食やゼリー食のような、いわゆる流動食を用意することになります。水分でむせる場合は、とろみをつけます。サラサラすぎるとむせやすくなり、ドロドロすぎると引っかかりやすくなります。個人によってトロミの調節が必要です。

好物の使用、感覚刺激を入れるためにやや濃いめの味付け、体温と温度差をつけること、食欲をそそる匂いや盛りつけを意識して食べる意欲につなげましょう。今食べている食事を少し工夫することでより安全に食べることができます。

食事の姿勢を整える

食べ物をきちんと飲み込めるように、食事の姿勢は重要なポイントです。
椅子に座れる場合は、深く腰掛け、背もたれなどで姿勢を安定させます。

ベッドの上で食事する場合は背もたれを45度以上の角度に起こして、頭の後ろに枕などを置いて姿勢を整えます。とくに大切なのは、首や頭の姿勢です。下顎が上がっていると食べ物が気管に入りやすいため、頭部に枕を当てるなどして、首の筋肉がゆるむ(頸部前屈位)やや前かがみの姿勢がおすすめです。
食後、1,2時間は食べ物が逆流しやすいので「食べてすぐに寝ない」ようにしてください。

食べ方・食べさせ方の工夫をする

・急がずにゆっくり と少量ずつ口に入れる。
・よくかんで 、口の中のものは飲み込んでから次のものを入れる 。
・テレビを観ながら等の「ながら食べ」はやめ食べることに集中する。

食事介助では、食べる方の斜め横に座り、食べ物は少し下から口に運ぶことが大切です。声かけをしながら、本人がしっかり目覚めて食事に集中できるような環境を整えます。一口の量と口に運ぶペースには注意しましょう。

口腔内をケアする

口腔ケアは口の中の清潔を保つためのケアであり、摂食嚥下障害への口腔ケアは欠かせないポイントです。歯ブラシなどを用いて、口腔内を清潔にすることで食物残渣(しょくもつざんさ:食べ物の残りカス)や、口腔内の細菌を除去し、清潔な状態にします。また、口腔ケアは、唾液分泌を促し、誤嚥による肺炎の予防、脳の活性化など、期待される効果はたくさんあります。

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嚥下体操(準備体操)について

食べ物を飲み込みやすくするために、摂食・嚥下機能訓練を行うことも有効です。訓練方法はいろいろありますが、家庭でも簡単に取り入れることのできる嚥下体操を紹介します。誤嚥は食べ始めのひと口目に起こりやすいので、食べる前の準備運動として行うのがおすすめです。

おうちでできる嚥下体操

1)ゆっくりと深呼吸をします。
2)普通に呼吸しながら、首をゆっくりと回します。
3)肩の上下運動を行います。
4)上体を左右にゆっくり倒します。
5)頬をふくらませたり、ひっこめたりします(2~3回)
6)大きく口を開いて、舌を出したり、ひっこめたりし、左右にも動かします(各2~3回ずつ)
7)「パパパ、ラララ、カカカ」または「パラカ」とゆっくりと発声します。
8)口をすぼめて息を強く吸い、冷たい息が喉にあたるようにして喉の感覚をリフレッシュします。
9)額に手を当てて抵抗を加え、おへそを覗き込むように強く下を向くようにします。
10)ゆっくりと深呼吸します。

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摂食嚥下障害ケアのまとめ

看護の視点から、摂食・嚥下障害のリスク対策などについて解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。

飲食が進まないように感じる場合は、摂食嚥下障害の可能性があります。
家族の様子で次のような変化はないか、セルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA