大腸がんとは?
大腸がんは、大腸の内側の粘膜に生じるがんのことを指し、がんの中で国内で最も患者数が多く、がんによる死亡数では肺がんに次いで2番目に多い疾患です。大腸は大きく結腸と直腸に分けられ、結腸に生じたがんを結腸がん、直腸に生じたがんを直腸がん、と呼びます。
大腸には、大腸内の水分やその他の成分を吸収し便を適度な硬さにする機能とぜん動運動によって便を出しやすくする機能があります。大腸がんの影響により、腸の内側の空間が狭くなると、便が通過しにくくなり、便秘や下痢などの症状が現れるほか、便に血が混じることがあります。しかし、これらの症状はがんが進行してから現れやすく、初期の大腸がんは自覚症状がほとんどない場合が多く、気づいたときにはもうかなり進行している状態、という可能性があります。
大腸がんはの進行度はステージ0〜4の5つに分類されており、「がん細胞が大腸の壁のどれほど深くまで浸潤しているか」、「リンパ節への転移」、「他臓器への転移」の3つのポイントから、分類されます。ステージ4に近づくほど完治の可能性が低くなり、命を落とすリスクは高くなってしまいます。一方で、ステージ0の状態のうちに早期発見・早期対処ができた場合には完治する可能性も高くなるため、大腸がんの治療で最も大切なことは早期発見であると言うこともできます。
しかし、初期の大腸がんは自覚症状があまりなく、簡単に気づける疾患ではありません。では、早期発見・早期対処するために、どのようなことに気をつければいいのでしょうか?
次の章では、早期発見・早期対処の重要性とそのために知っておくべきことを解説します。
早期発見・早期治療の重要性とそのために知っておくべきこと
前章でもご説明したように、大腸がんは進行するにつれて、完治の可能性と生存率が低くなってしまいます。がんは手術などの治療によってがん細胞をすべて除去してから5年経過しても再発や転移が見られない場合は「完治」と捉えられます。その理由は、再発・転移する場合は除去後3年以内のケースが多い一方で、5年以降に再発・転移するケースはあまり見られないためです。ステージごとの5年生存率(完治する確率)は、2013~2014年時点でステージ0で97%、ステージ1で94%、ステージ2で88%、ステージ3で77%、ステージ4で18%(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」)となっており、早い段階で見つかれば手術や内視鏡的治療で治すことができるものの、進行すると生存率が5分の1程度に下がってしまいます。
大腸がんを少しでも早く発見し、完治の可能性を高くするために、そのポイントとなる「大腸がんになりやすいと言われている人の特徴」と「大腸がんの症状」をご紹介します。少しでも当てはまるものがあればがん検診を受けたり、専門医に相談するようにしましょう。
大腸がんになりやすい人の特徴
・40歳以上の方
・飲酒、喫煙の習慣がある方
・肥満の方
・血縁者に大腸がんになった人がいる方
・加工肉・赤身肉を良く食べる方
大腸がんの症状
・下痢や便秘を繰り返す
・血便が出る
・貧血
・体重が減る
・お腹の張り
・腹痛
初期段階では痛みを感じることは多くありませんが、むしろ痛みがないことが大腸がん発見のポイントになることもあります。お腹が痛くないのに下痢が続いている、血便が出る、といった状況の方は、真っ先に大腸がんを疑い、速やかに医療機関を受診してください。
ここまで、大腸がん発見のためのポイントをご説明しましたが、こうしたことにいくら気を付けていても、大腸がんを早期発見できるという保障はありません。特に自覚症状が出る頃にはがんは進行しているということはしばしばみられます。早期発見するためには、定期的にがん検診を受け、少しでも気になる点があればすぐに専門医に相談することが重要です。
特に、「大腸がんになりやすい人の特徴」に当てはまる方は、1年に少なくとも1回のがん検診を受けるようにしましょう。
大腸がんが進行してしまうと
大腸がんが進行すると、どうなってしまうのでしょうか。進行した場合の問題点について、いくつか具体例をご紹介します。
がんの転移
大腸がんは、血液やリンパの流れによって他の部位へ転移するリスクがあります。転移しやすい場所として、リンパ節、肝臓、肺、骨、脳、腹膜が挙げられます。転移してしまうと、転移した部位に応じて激しい痛みや手足の麻痺など、様々な症状が生じる恐れがあります。
手術による合併症
切除範囲が広くなればなるほど、合併症を起こしやすくなります。特に、直腸がんの手術の場合は、排尿や性機能に関わる神経を剥離(切除する側から剥がすこと。神経はダメージを受けます)したり、時に合併切除する必要があり、術後に排尿障害や性機能障害などが生じることがあります。また、場合によってはストーマ(人工肛門)などが必要となることもあります。
抗がん剤治療による副作用
大腸がんは一般的にステージ3(時にステージ2の中でも再発リスクが高い場合)から抗がん剤による治療が行われます。抗がん剤による治療では、強い副作用が出るリスクもあります。代表的な副作用として吐き気・嘔吐、下痢、倦怠感、手足の皮膚の荒れやしびれ、脱毛などが挙げられます。治療期間は短くても3か月、長ければ数年以上にわたる場合もあり、精神的に大変辛い生活を送ることを余儀なくされます。
大腸がんの検査と治療
この章では、大腸がんの検査と治療についてご紹介します。
検査
大腸がん検診(便潜血検査)
いわゆる検便で、2日分の便を採取し、便に混じった血液を検出する検査です。がんやポリープなどの大腸疾患があると大腸内に出血することがありますが、通常は微量で目には見えません。その微量な血液を検出する検査で、大腸がんの死亡率を減少させることが科学的に証明されています。
精密検査
大腸内視鏡検査
下剤で大腸を空にした後に、肛門から内視鏡を挿入し、大腸内に異常がないか調べる検査です。異常があった場合には、患部の一部を採取して精密検査を行い、がん細胞の有無を確認します。
大腸X線検査
下剤で大腸を空にした後に、肛門からバリウムを注入し、空気で大腸をふくらませてX線写真をさまざまな方向から撮影します。
治療
大腸がんの治療方法はステージによって異なります。
ステージ0
内視鏡によって、大腸内のがんを切除します。
ステージ1
浸潤が浅い場合は、内視鏡によってがんを切除し、さらに必要がある場合は開腹手術や腹腔鏡手術を行い、がんやリンパ節を切除します。
浸潤が深い場合は、手術によってがんやリンパ節を切除します。
ステージ2
手術による、がんの切除。ステージ2の中でも再発リスクの高い場合には、抗がん剤治療や放射線治療を追加することもあります。
ステージ3
手術による、がんの切除に加え、抗がん剤治療や放射線治療も行います。がんの位置や大きさによっては、切除が困難な場合もあり、その場合は抗がん剤治療や放射線治療を行います。
ステージ4
抗がん剤治療が中心となります。それに放射線治療を組み合わせたり、手術による、がんの切除を行うケースもあります。
末期状態であれば、症状緩和が中心となります。
大腸がんについての総まとめ
今回は大腸がんについて解説してきました。最後に重要なポイントを下記にまとめます。
血便や下痢、便秘、貧血などの症状がある方は大腸がんがあるかもしれません。
少しでも心当たりのある方は、まずはセルフチェックをしてみましょう。