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更新日:2023年6月27日 1,507PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

慢性閉塞性肺疾患(COPD)|専門医監修の症状とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者
  • 伊藤 雄二
  • 社会医療法人 大雄会 総合大雄会病院 呼吸器内科

気になる症状

最近、歩行後の息切れや痰、長引く咳、痰のような症状はありませんか?これらの症状に心当たりがあれば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクが隠れているかもしれません。特に40歳以上の喫煙者の方でこれらの症状がある場合には、より慢性閉塞性肺疾患のリスクが高くなるため、注意が必要です。

今回は、慢性閉塞性肺疾患について、専門医が病気の基礎知識をわかりやすく解説します。

慢性閉塞性肺疾患とは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、主に長期間の喫煙により有害物質が身体に蓄積されることが原因となり、気管支や肺になんらかの障害が起こる病気です。以前まで「慢性気管支炎」と「肺気腫」と呼ばれていました。
代表的な症状は、息切れや長引く咳、痰が挙げられます。長い時間をかけて蓄積された有害物質が原因となるため、40歳以降に発症することが多く、そのため加齢による症状だと誤認されやすい病気です。
重症化すると、呼吸不全や合併症などで命に関わるケースも多く、WHOによると2019年時点で世界の死亡原因第3位となっています。さらに、慢性閉塞性肺疾患によって傷つけられた肺の機能は二度と元に戻らず、その後の人生における生活の質の著しい低下が懸念されます。

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慢性閉塞性肺疾患は早期発見することが最重要

慢性閉塞性肺疾患は、早期発見することが非常に重要となってくる病気ですが、同時に早期発見することが難しい病気でもあります。
なぜ早期発見することが難しいかというと、長い時間をかけてゆっくりと進行することと、風邪にも似た症状であることから、重症化するまでは慢性閉塞性肺疾患の症状だと識別しづらいためです。実際に慢性閉塞性肺疾患の患者様には「ただの風邪かと思っていた」、「加齢による症状だと思っていた」というパターンが数多く見受けられます。
もし、慢性閉塞性肺疾患だと気づかないまま喫煙を続けてしまうと、気管支に炎症が起きて咳や痰がおさまらなくなったり、気管支自体が細くなってしまうことで酸素の循環が悪くなり、息切れや呼吸困難が起こりやすくなってしまいます。
これらの症状が重症化する前に、慢性閉塞性肺疾患の可能性を疑い、早めに対処できるか・できないかによって、その後の生活へかかる負担は大きく変わってきます。早期発見できた場合と重症化してしまった場合、どのように変わってくるのか、この後具体的な例を挙げて解説していきます。

早期発見できた場合

・症状の進行を最小限に抑え、これまで通りの日常生活を送れる。
・治療は禁煙のみ(※)で、薬物療法や行動制限を行わずに済むケースが多い。
※発症の原因の90%が喫煙(受動喫煙含む)のため

重症化してしまった場合

・禁煙のみならず、薬の服用や食事制限、行動制限など、これまで通りの日常生活が送れなくなる。
・咳や痰、息切れなどが慢性的に続くようになる。
・軽い運動や階段の昇り降りも満足に行えなくなり、生活の質が低下する。
・体内の酸素が常に不足している状態になり、最悪の場合は在宅酸素療法を導入していなければならない状態になる。
・肺癌や心血管疾患の合併のリスクが高くなり、最悪の場合命を落としてしまうこともある。

このように、早期発見できた場合と重症化してしまった場合での生活へかかる負担は大きく変わってきます。そのため、定期的な健康診断を受けたり、単なる風邪のような症状でも一度かかりつけ医を受診するなど、早期発見へつながるご自身の取り組みが非常に大切になってきます。特に、長期間の喫煙をされていて、風邪のような症状が長引いている方は、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

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重症化してしまうと完治は不可能

「重症化しても治療すればいいのでしょう?」とお考えになった方もいらっしゃるかもしれません。しかし、残念ながら慢性閉塞性肺疾患は症状が進行し、肺の機能に障害が起きてしまうと、完治させることは現時点では困難とされています。
それは、一度損傷を起こした気管支や肺胞などの肺の機能は元に戻すことができないためです。
従って、早期発見することで、肺の状態をそれ以上悪化させないことが何よりも大切になってくるのです。

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治療時の最優先事項は「禁煙」!

前章で解説したように、慢性閉塞性肺疾患は症状がある程度進行してしまっていると完治させることが困難な病気です。
そのため、慢性閉塞性肺疾患の治療は「症状を悪化させないこと」、「身体的負担の緩和」、「生活の質の維持」に焦点を当てて行われます。治療方法の代表例として、次の3つをご紹介します。

①禁煙

禁煙をすることで、肺の状態がそれ以上悪化しないようにします。慢性閉塞性肺疾患の治療で最も重要なポイントです。

②薬物療法

気管支の炎症を抑える薬や細くなった気管支を拡張させる薬を服用し、呼吸をしやすくします。

③運動療法

呼吸方法の練習や適度な運動の習慣化を促し、生活の質の維持・向上を図ります。

以上の3つが代表的な治療方法です。
前述したように、これらの治療方法でも症状が進行してしまっている場合は完治させることは困難です。そのため、これらの治療を一生続けていかなければならない可能性もあるのです。万が一、そうなってしまったら身体的な負担だけでなく、精神的な負担や治療などにかかる金銭面的な負担と長い間付き合っていかなければなりません。そうならないためにも、早期発見し、医師の指示のもと適切な処置を行うことが重要となってきます。

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慢性閉塞性肺疾患についての総まとめ

長期間喫煙をしていて、息切れや咳、痰などの症状が続く方は慢性閉塞性肺疾患かもしれません。
少しでも心当たりのある方は、まずはセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA