がん放射線療法とは?
がん放射線療法は、患部に放射線を照射して、細胞のDNAに損傷を与えます。手術、薬物療法と並んで、がんの三大治療の一つです。放射線療法の目的は、大きく分けると、がん細胞の根絶をめざすものと、転移による痛みなどの症状の緩和をめざすものがあります。
治療用放射線としては、電子線、陽子線、重粒子線、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などが用いられます。放射線治療は単独で行うこともありますが、手術や薬物療法と組み合わせて行うことも多くあります。
一般的に放射線治療は通院で行われることが多く、週5日間(月〜金曜日)の治療を何週かにわたって治療します。1回の治療時間は10~20分程度。照射中の痛みはありません。
がん放射線療法の副作用について
放射線治療は日進月歩で進歩しており、がん周囲の正常組織にはできる限り少ない量の放射線を照射する方法が開発されていますが、それでもさまざまな副作用は生じます。
放射線治療の副作用は、放射線治療中または終了直後のもの(急性期)と、終了してから半年から数年たった後からのもの(晩期)があります。
急性期の副作用
放射線治療中は、全身的な症状が出ることがあります。また、照射された部位によってさまざまな副作用が起こる可能性があります。
晩期の副作用
晩期の副作用には「二次がんの発生(放射線が照射された部位からできるがん)」「妊娠や出産への影響」などがあります。なお、細心の注意を払って治療を行うので、重篤な晩期の副作用はごく少数の人にしかあらわれません。
急性期の副作用と対策について
放射線治療中(または終了直後)には、さまざまな副作用があらわれます。主な種類とケアの方法について解説します。
疲労感、だるさ、倦怠感
吐き気・嘔吐や広範囲に治療している場合には、疲れやすい、だるい、気力が出ないなどの症状が治療開始後に、あらわれることがあります。吐き気や嘔吐が続くときは、担当医へ相談しましょう。また、放射線治療は平日毎日続くので、疲れやだるさを感じたら、休息をとること、十分な睡眠をとることを心がけます。仕事をしている方は、仕事先に相談し、通院への配慮を得るようにしましょう。なお、治療中に感じた疲労感は、治療が終了して数週間で感じなくなります。
食欲不振
治療部位によっては、食欲がなくなることがありますが、少量ずつ数回に分けて食べたり、食べやすいものを選択したり、高カロリーの食事を取り入れたりする工夫をします。食事がとれないときは無理をしないで、担当医や治療スタッフ、栄養士に相談しましょう。
皮膚の変化
治療部位に、皮膚の乾燥やかゆみ、ヒリヒリ感、熱感、色調の変化、むくみ、皮膚炎が起こることがあります。これは放射線が皮膚の基底細胞(皮膚をつくり出している細胞)に働きかけることによって起こる症状です。放射線皮膚炎は、放射線治療特有の症状で、治療には放射線に関する専門的知識が必要です。予防には、清潔保持・保湿が重要です。保湿の仕方については、担当医師や看護師と相談しましょう。症状があらわれた場合は、担当医に相談しましょう。治療後1か月程度で症状は改善します。
局所的な副作用
照射される部位によってさまざまな副作用が起こる可能性があります。
1)頭部を照射する場合/脱毛
頭全体の照射では全体的に毛が抜け、頭の一部分の照射では照射された部分の毛が抜けます。放射線治療を開始してからおよそ2~3週間後に毛が抜け始めるので、ウィッグ(かつら)や帽子の準備をします。一般に、治療が終了して3~6カ月すると毛はまた生え始めます。頭皮も弱くなっているので治療終了2週間後までは洗髪時も泡で優しく洗いましょう。
2)口や鼻、のどに照射する場合/口腔粘膜炎、口腔乾燥
口やその周囲に放射線をあてる場合、口腔粘膜炎、口腔乾燥の症状が起こります。治療の前に歯科で歯の治療をしておき、口の中の清掃に努めます。症状があらわれたら、こまめにうがいや保湿を行います。
3)胸部に照射する場合/咳、息切れ
肺がん、食道がん、乳がんなどで胸部に放射線をあてる場合、肺炎が起こることがあります。治療中や治療後しばらくは、咳や息切れ、発熱がないか注意して観察し、異常があれば速やかに主治医に報告します。なお、肺炎は治療終了後6カ月以内に起こりやすいといわれています。症状が出たら、治療をした担当医師及びかかりつけ医に受診しましょう。
4)腹部に照射する場合/軟便や下痢
おなかに放射線をあてると、腸の粘膜が傷ついて、下痢が起こることがあります。下痢になると脱水症状になる恐れがあるため、十分に水分をとります。症状がつづく場合は、下痢止めを服用します。おなかに優しい食事をとりましょう。
生活の工夫について
放射線治療中は、さまざまな体調変化が現れる可能性があります。常に自分の体調に気をつけながら、仕事や家事などに無理をせず生活することが大切です。主な注意点を紹介します。
刺激が少なく、汚れてもいい下着を選ぶ
放射線治療では、照射部位の皮膚に油性マーカーや転写シールなどで印(マーキング)をつけます。印は色移りしやすいので、下着や衣類は汚れてもいいものを選びましょう。また、皮膚炎を防ぐために、お肌にやさしい下着を身につけるようにします
入浴はぬるめのお湯で
お肌に刺激を与えないように、また、放射線治療のマーキングが消えないように、入浴はぬるめのお湯にします。シャワーの圧力は弱めに変更します。治療部位は、刺激の少ない弱酸性の泡石鹸を用いて、ごしごしこすらないこと、十分に洗い流すことも大切です。
食事を大切に
放射線治療は数週間にわたって続きます。この期間を元気に乗り切れるように、栄養バランスのとれた食事をしっかりとるようにしましょう。また、治療の合併症で、食欲不振、口内炎、味覚障害などがある場合は、少量でも「食べられるもの」を食べるようにしましょう。たとえば、スープや茶碗蒸しなど、食べやすいものを選ぶことがおすすめです。
がん放射線療法ケアについての総まとめ
看護の視点から、がん放射線療法の副作用対策などについて解説しました。
最後に、ポイントをまとめます。
がん放射線療法中は、さまざまな体調変化に耳を傾けることが大切です。
副作用の疑いがある主な体調変化について、セルフチェックをしてみましょう。