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更新日:2023年6月27日 927PV
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ

がん薬物療法ケア |看護師監修のケア解説とセルフチェック

発信者
  • 中日新聞LINKED
監修者

気になる症状

がん薬物療法は抗がん剤をはじめ、さまざまな薬物を使う治療法です。

現在、がん薬物療法を受けている方、そして、これからがん薬物療法を受ける方に向けて、看護の視点から役立つ情報をお届けします。

がん薬物療法とは?

がん薬物療法は、がんに対して薬で治療を行う方法のこと。手術、放射線治療と並んで、がんの三大治療の一つです。がん薬物療法の目的は、がんを治したり、がんの進行を抑えたり、がんによる身体症状を緩和することにあります。がんの種類や進行度などに応じて、目的を定めた治療が行われます。

具体的な薬の種類は、従来の「抗がん剤」、ホルモンの影響を受けて増殖するがんに作用する「ホルモン療法薬」、がん細胞の特殊な標的にピンポイントで作用する「分子標的薬」、免疫細胞に働きかけてがん細胞を排除する「免疫チェックポイント阻害薬」などがあります。これらの薬物を、口から服用したり、静脈への注射(静脈内注射・点滴)、皮下注射、筋肉注射を行うことにより、血液を介して全身にいきわたらせます。

また、がん薬物療法に伴う痛みや吐き気などの症状緩和を目的にして使う薬(支持療法といいます)も、がん薬物療法に含まれます。

目次

薬の種類と副作用について

細胞障害性抗がん薬

細胞障害性抗がん薬は、細胞の増殖の仕組みに着目してがん細胞を攻撃する薬です。薬の副作用には、アレルギー反応、吐き気、食欲低下、だるさ、口内炎、下痢、脱毛、手足のしびれ、皮膚の異常(色素沈着や乾燥など)などがあります。このほか、採血してわかる副作用として、肝機能障害、腎機能障害、血液の異常(白血球減少や血小板減少、貧血など)があります。

内分泌療法薬(ホルモン療法薬)

内分泌療法薬は、ホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃する薬です。乳がんや前立腺がんなどの特定のタイプのがんで使われます。副作用として、ホットフラッシュ(ほてり)のほか、生殖器、関節、骨・筋肉にあらわれる症状があります。

化学療法

化学療法は、いわゆる抗がん剤治療のことです。
化学療法では、がんの細胞を攻撃する薬剤を使ってがんの細胞を殺すことで、がんを治療することを目的とします。
特に、抗がん剤治療ではがん細胞以外に正常な細胞を攻撃してしまいます。
多くの人はイメージがあると思いますが、副作用があることが多いので治療の進め方や薬剤の種類を適切に調整することが重要です。

分子標的薬

分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や栄養を運ぶ血管、がんを攻撃する免疫に関わるタンパク質などを標的にしてがんを攻撃する薬です。副作用は薬の種類によって異なりますが、決して副作用が軽いわけではないので注意が必要です。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞を異物として排除する免疫反応を強める薬です。自分の体を守る免疫細胞ががん細胞を攻撃できるように、がん細胞と免疫細胞の結合を邪魔します。薬によって強まった免疫反応は、がんのない部位でも強くなるため、思わぬ副作用を起こすことがあります。

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副作用の対策について

副作用の症状は多岐にわたるため、個別に対策を立てていきます。ここでは、主な副作用について一般的な対処方法を解説します。なお、副作用が強く出る場合やつづく場合は、速やかに主治医に伝えましょう。

骨髄抑制

薬物療法により血液をつくる骨髄の機能が衰えると、白血球、赤血球、血小板などが減少します。これを「骨髄抑制」といいます。骨髄抑制により、細菌や真菌(カビ)に対する抵抗力が弱くなり、感染症を起こしやすくなります。対策のポイントは、徹底した感染予防です。手洗い、シャワー、入浴で体を清潔に保ちます。また、口腔内感染を防ぐために、歯ブラシで口の中を清潔に保つことも重要です。

吐き気・嘔吐

薬物療法により、下痢や便秘の症状が現れます。下痢の場合は、脱水症状を防ぐために十分な水分や経口補水液などを心がけましょう。便秘の場合は、多めの水分をとり、体を動かすことを心がけましょう。

下痢・便秘

薬物療法により、下痢や便秘の症状が現れます。下痢の場合は処方された薬をしっかり飲み、脱水症状を防ぐために十分な水分補給を心がけましょう。便秘の場合は、多めの水分をとり、体を動かすことを心がけます。

口内炎

口の中の粘膜が炎症を起こし、痛みが出たり食べ物がしみたりします。口の中を清潔にして、こまめにうがいをすると、乾燥を防ぐとともに感染の予防にもなります。固いもの、熱いもの、香辛料、アルコールなどの刺激物は避けましょう。

脱毛

脱毛は精神的にもつらい症状の一つです。脱毛が始まる時期に合わせ、医療用のかつら(ウィッグ)や帽子を準備しましょう。脱毛している間は、直射日光や乾燥に気をつけ、頭皮を保護します。頭を洗うときは地肌を強くこすらないようにしましょう。

手足のしびれ感

薬の種類によって、手足の感覚が鈍くなることがあります。やけどやケガに気をつけ、手袋や靴下で皮膚を保護します。指先の運動やマッサージで血行を良くすることも大切です。

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生活の工夫について

がん薬物療法は短期間で終わる場合もあれば、長期にわたって継続する場合もあります。有効な薬を長く続け、上手に副作用とつきあっていくために役立つ方法についてご紹介します

療養ダイアリーをつける

副作用のあらわれ方は人によって異なります。どの薬を体内に入れたときに、どんな副作用が出てくるのか把握するために、日記をつけることはとても有効です。毎日の体温、体重、排便などの記録も合わせてつけておくと、健康管理に役立ちます。

高額療養費制度を利用する

がん薬物療法は高額な費用がかかることもあり、経済的な負担も大きくなりがちです。その際に負担を軽減する仕組みとして「高額療養費制度」があります。これは、医療機関や薬局での支払いが、自己負担限度額を超えた場合に、超えた金額が後日、払い戻される仕組みです。がん薬物療法が始まる前に、ご自身が加入している公的医療保険に問い合わせておきましょう。

相談窓口を利用する

薬物療法を続けている間は、仕事との両立、家事との両立、精神的なストレスなど、さまざまな生活上の課題が出てきます。そういう場合、一人で抱え込むことなく、公的な相談窓口を利用しましょう。地域のがん診療連携拠点病院には、患者さんと家族を支える「がん相談支援センター」が配備されています。インターネットで、お近くのがん相談支援センターをチェックしてみてください。まずは、かかりつけの病院で相談窓口があるか確認しましょう。

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がん薬物療法についてのまとめ

看護の視点から、がん薬物療法の副作用対策などについて解説しました。最後に、ポイントをまとめます。

がん薬物療法中に体調に変化が現れたら、副作用かもしれません。副作用はそのまま見逃さず、次回の受診時に伝えることが大切です。
主な体調変化についてセルフチェックをしてみましょう。

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画像提供:PIXTA