心筋梗塞等の心血管疾患——①急性期医療
厚生労働省が重点的に医療提供体制づくりを進めるテーマとして、5疾病・5事業があります。今回はそのなかで「心筋梗塞等の心血管疾患(※)」を取り上げ、急性期医療の取り組みについて紹介します。
※2018年度から、「急性心筋梗塞」は「心筋梗塞等の心血管疾患」と見直され、心不全などの合併症を含めた医療提供体制の構築が進められています。
◎5疾病・5事業については、こちらをごらんください。
突然、起こる心血管疾患。患者の命を救う体制づくり。
「急性心筋梗塞」は、心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が突然詰まり、心筋が壊死に陥る病気。その死亡例の半数以上は、病院外での「心停止」によるものです。また、「急性大動脈解離」は大動脈の内側に亀裂が入る病気で、発症後2日間での死亡率が50%に達します。
こうした死亡率を抑制することを目標に、日本全国で、24時間専門的な急性期診療(外科的治療・カテーテル治療・内科的治療)を提供する体制づくりが進められています。急性期診療の目標は、平均的な救急搬送圏内において各病院が連携し、病院前救護を含め、早急に適切な治療を開始する体制を構築することです。
また、心血管疾患の終末的な病態である「心不全(全身に血液を送り出す機能がうまく働かない状態)」については年々増加傾向にあり、医療提供体制の拡充が求められています。
岐阜医療圏の患者の命を救う体制づくり。
心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が詰まる「急性心筋梗塞」をはじめ、急性期の心血管疾患の治療は一刻を争います。
突然、心血管疾患を発症した患者の命を救うために、岐阜医療圏では救急・急性期医療体制づくりに全力で取り組んできました。現在、冠動脈バイパス手術などの外科的治療や心臓カテーテル治療が可能な救急医療施設が5カ所。さらに、心臓カテーテル治療のみを行う救急医療施設が2カ所。合計7施設を医療圏内に配し、24時間365日体制で救急搬送を受け入れ、心臓CT検査や心臓カテーテル検査・治療、心臓外科治療に邁進しています。
なお、岐阜大学医学部附属病院には、重症の心血管疾患に対応する心臓内科系集中治療室(CCU)も整備されています。
- 心臓外科治療・心臓カテーテル治療を行う救急病院
- 国立大学法人岐阜大学医学部附属病院
- 岐阜県総合医療センター
- 岐阜市民病院
- 岐阜ハートセンター
- 松波総合病院
- 心臓カテーテル治療を行う救急病院
- 羽島市民病院
- 公立学校共済組合東海中央病院
岐阜医療圏の評価と課題 死亡者数の減少をめざして。
心筋梗塞等の心血管疾患では、救急要請から医療機関に収容するまでの時間が救命の鍵を担います。岐阜医療圏の平均所要時間は29.6分で、これは全国平均の37.1分より約7分短く、迅速な搬送が行われていることを示しています。また、この数字は、岐阜医療圏における全疾患の搬送時間(急病のみ、事故を除く)29.5分とほぼ同じで、高い水準であることがわかります。(数字は2015年度実績)
その一方で、急性心筋梗塞による死亡者と年齢調整死亡率(※)は下記のようになり、年齢調整死亡率(人口10万対)は全国平均をやや上回ります。重症度に応じた適切な急性期治療を提供することにより、今後さらに死亡者数の軽減を図っていくことが必要です。
男性 | 死亡者数 170人 | 年齢調整死亡率23.0 (全国 16.2) | |
---|---|---|---|
女性 | 死亡者数 125人 | 年齢調整死亡率 8.1 (全国 6.1) |
- ※年齢調整死亡率とは:道府県別に死亡数を人口で除した死亡率(粗死亡率)を比較すると、各都道府県の年齢構成に差があるため、高齢者の多い都道府県では高くなり、若年者の多い都道府県では低くなる傾向があります。このような年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように年齢構成を調整しそろえた死亡率が年齢調整死亡率です。
参考文献・出典など
■厚生労働省「第7次医療計画について」
■厚生労働省「第7次医療計画における5疾病・5事業 (がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患、救急、災害、へき地、周産期、小児)及び在宅医療の医療体制」
■岐阜県「第7期保健医療計画」
画像提供:PIXTA
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