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5疾病・5事業|5疾病
がん

がん——②がんとの共生支援

2021年11月16日|95 VIEW

厚生労働省が重点的に医療提供体制づくりを進めるテーマとして、5疾病・5事業があります。今回はそのなかで「がん」を取り上げ、がんとの共生支援について紹介します。
◎5疾病・5事業については、こちらをごらんください。

がん患者と家族を切れ目なく支援していく。

がん医療は、急性期の入院治療だけでは終わりません。がんとともに生きる人々を支え、在宅医療までの切れ目のない医療を提供するために、がん診療連携拠点病院を中心とした病院やかかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬局、訪問看護ステーション、介護、福祉施設との連携体制の構築が重要です。国は「第3期がん対策推進基本計画」において、切れ目のない医療・ケアの提供とその質の向上を図るために、地域の実情に応じて、かかりつけ医が拠点病院などにおいて医療に早期から関与する体制や、病院と在宅医療との連携及び患者のフォローアップのあり方について検討していくとしています。多施設連携・多職種連携は、がん医療の質を高めるために大きな課題です。

岐阜医療圏の地域連携の取り組み。

岐阜医療圏では、がんの急性期から維持期(慢性期・生活期)まで切れ目のない医療を提供するために、地域連携クリティカルパス(急性期・回復期病院・診療所が共通の治療計画書を用いて治療を行うシステム)を導入。拠点病院を中心に、胃がん、肺がん、乳がんなど10種類のパスが運用されています。各拠点病院では、必要に応じて、地域の在宅診療に携わる医師や訪問看護師などと退院前カンファレンスを行い、スムーズな在宅療養、そして看取りまで含めた医療を支援しています。
なお、地域連携クリティカルパスの運用件数は年々増加していますが、今後は病診連携のみではなく、福祉や介護保険施設などとの連携においてもパスの活用ができるよう取り組みを進める必要があります。そのため、地域連携に関わる関係者が一堂に会して会議を開くなど、顔の見える関係づくりが課題となっています。

がんと診断されたときから始まる緩和ケア。

がんと診断された時から、がん患者や家族の身体的な苦痛、精神的な苦痛が始まります。さらに、がん患者や家族は、治療の過程や再発・転移がわかったときなど、さまざまな場面でストレスを感じます。そうした苦痛を和らげるには、医療的ケアだけでなくも心理的・社会的・スピリチュアルな支援が必要です。
国は、がんと診断されたときから緩和ケアが受けられるよう、専門知識をもつ医療従事者を養成し、患者や家族が迅速に緩和ケアチームに繋がることのできる体制づくりを進めています。具体的には、全国のがん診療拠点病院にはすべて緩和ケアチームがあり、入院、通院治療を通じて緩和ケアを受けることができます。

岐阜医療圏の緩和ケアの取り組み。

緩和ケアを受ける場は、通院、入院、在宅療養(自宅で受ける緩和ケア)の3つに分けられます。岐阜医療圏では、それらすべての場面において、十分な緩和ケアが受けられるよう整備を進めています。
まず拠点病院には緩和ケアチームが設置されていて、週1回以上の頻度で、定期的に病棟ラウンドやカンファレンスを行い、苦痛のスクリーニングや症状の緩和が行われています。各病院には「緩和ケア外来」が開設され、通院治療を続けている患者と家族の苦痛の軽減に努めています。
また、がんを治すことを目標にするのではなく、がんの進行などに伴う体や心のつらさに対する専門的なケアを提供する「緩和ケア病棟」は、岐阜医療圏に合計70床、配置されています(2016年度)。今後は、在宅における緩和ケアのニーズが増加すると考えられます。そのため、在宅医療を希望する患者と家族の意向にそった継続的な医療や介護が提供されるとともに、がんの在宅緩和ケアに携わる医療従事者の育成が必要です。

拠点病院を中心にがんリハビリテーションを実施。

緩和ケアと並んで重要なのが、がんリハビリテーションです。がんになると、がんそのものや治療に伴う後遺症や副作用などによって、さまざまな身体的・心理的な障害を受けます。そのため、がんと診断されたときから、障害の予防や緩和、あるいは能力の回復や維持を目的に身体的、社会的なリハビリテーションを実施することが大切です。岐阜医療圏では、がんリハビリテーションにも注力しており、リハビリテーションを実施する医療機関は増加しています(14カ所:2015年度実績)。しかし、人口10万人あたりの届出数は全国平均よりも低い水準で、さらなる拡充が求められています。

相談支援サポートや治療と職業生活の両立支援。

がん患者が尊厳を持って安心して暮らしていくために、生活や就労を支える体制づくりが重要な課題です。全国のがん診療連携拠点病院内には「がん相談支援センター」が設置され、がんに関係する情報を無償で提供したり、患者や家族からの質問や相談に応えています。岐阜医療圏では各拠点病院に「相談支援センター」を、がん医療を提供する病院に「患者サロン」を設置。がん患者と家族への相談支援体制を構築し、療養生活の質の維持向上に努めています。ただし、2018年度の調査によると、拠点病院のがん相談支援センターの相談件数は伸び悩む傾向にあり、センターの活用を県民にもっと周知することが課題になっています。
また、がん患者にとって重大な関心事として、治療と仕事の両立の問題があります。がん患者の約3人に1人は、20代から60代でがんに罹患し、仕事を持ちながら通院している人が多くいます。岐阜県では、働く世代のがん患者の就労支援施策を充実させるために、拠点病院と岐阜県労働部局との連携を図り、就労や雇用に関する情報提供や相談支援体制を拡充しています。岐阜医療圏では3つの拠点病院それぞれに、社会保険労務士を配置。治療と仕事の両立を図れるように、法や制度の観点から相談に応えています。今後さらに、有効な支援を行っていくために、拠点病院における社会保険労務士による就労・雇用支援に加え、労働部局等と連携した治療と仕事の両立支援を県民や事業主に提供していく必要があると考えられています。


参考文献・出典など
■厚生労働省「がん診療連携拠点病院等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin.html
■岐阜県「第7期保健医療計画」
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/124969.html
■岐阜県がん患者支援情報提供サイト「ぎふがんねっと」
https://gifugan.net/
■厚生労働省「医療計画」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html
■岐阜県「第3次岐阜県がん対策推進計画」
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/17684.html

画像提供:PIXTA

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