中日新聞LINKED〈発〉

心を生きのびよう⑥―ある臨床心理士のつぶやきー

第6回 生きることと選ぶこと

2020.08.071,107 views

前回はこちら>>心を生きのびよう⑤―ある臨床心理士のつぶやきー

どうしよう…!

このごろ、私たちは今までにない選択をたくさん突き付けられているように思います。
お休みに出かけるか出かけないか。デリバリーにするのか外食するのか。
たとえば、首都圏の大学にいる娘を、帰らせるのかしないのか…。

今の状況では、新型コロナウイルスと経済の事情とのはざまで、政府ですら頭を悩ませているのですから、いわんや私たち庶民をや、ですね。

時間、という価値

ガソリンスタンドで私たちにもおなじみの、エネオスの社長が先日メディアの取材に答えて新型コロナウイルスの感染拡大防止で実施した在宅勤務(テレワーク)を「今後も5割以上をめざす。元に戻ることは考えていない」と。

ITの大手企業でも同じような発表がありましたが、今の状況をきっかけに、“時間”という新しい価値を生み出して、それを新たなことに活用するという企業の選択です。

考えていませんでした

選択といえば、この7月からレジ袋の有料化が始まりました。

始まった当初は、コンビニに行って「え!あ?そうだったね」と買ったものを手で抱えたはいいけれど、途中でドリンクを落っことしたりして、なくなってしまった小さな袋の重みを実感した方も多かったのでは…少なくとも私はそうでした。
レジ袋を買うのか、マイバッグなのか手で持つのかを、選ばなくてはなりません。

逆に考えれば、今まで選ばなさ過ぎていたのかもしれませんね。

 

青年期の宿題

私たちは、こういう選択肢をどのようにしてどれかに決めるのでしょう?

それは価値観だ、と思われた方、正解です。

そして、その価値観が、どのようにしてできるかといえば、人が思春期から青年期にかけて形成する、アイデンティティ(自我同一性)と深い関係があるのです。
価値観を形成することがアイデンティティに含まれますので、ほぼイコールと考えていいかもしれません。

学校の相談センターで

6月に学校がほぼ通常登校になってからも、ほとんど登校できていないSくん、それでも相談センターには頑張って週2回くらいは来ていました。

小学生の時には積極的なリーダー格だったのですが、中学での挫折体験から不登校になり、それ以来毎日ゲームの日々でした。
一念発起して進学したこの学校ですが、Sくんの心はなかなか“通学する”という選択肢をとってくれないようでした。
「コロナの休みは天国だった」そうです。

何も決めなくてよかったから。

決めること、の価値

アイデンティティは、「人生における役割感」と言いかえられたりします。人生において、どうしたいかを決めるとともに、世の中において何をするのか、何を大切にするのか、それが何となくではあっても心に定まっていく、そんな感じでしょうか。

何かを決めれば、何かを捨てることになるでしょう。
それでも、そうしなければ、ただ流されるだけの心もとない状態になってしまうかもしれません。

人は、行動を選ぶことで生き抜いてきました。これからもそうでしょう。Sくんのように、今決められないこともあるでしょう。

でもやはり、いつかは「決める力」を見出してほしいと願わざるを得ません。

画像提供:PIXTA

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  • アバター らうむ より:

    家族がコロナに罹患、濃厚接触者として自宅待機中。時間はたっぷり有るが入院中の家族も心配…これからの「いつもの生活」も心配…?…心配なのか…とにかく心が落ち着かない…
    「心を生きのびよう」を見つけ、ちょっと落ち着く…
    これからも読みますね

    • アバター ある臨床心理士 より:

      らうむさん、コメントをありがとうございます。
      大変ですね…。いま、声を出せない、一番辛い思いをしているのがらうむさんとご家族のような方かと思います。
      らうむさんの心がちょっとでもふわっとするような文を書きたいと思います。
      これからもよろしくお願い致します。

      • アバター らうむ より:

        重症の家族は人工呼吸器離脱できず、長期戦に… この先、何がどうなっていくのか… コロナだけに周りの人は何も聞かないし、自分からも言えないし。皆、気遣ってくだってるのは充分感じてます。でも、やっぱり息苦しい…ような気がする。平気でいられる自分は随分薄情だとも… 誰かに聞いてもらうと楽になるのか? 楽になっていいのか? よくわからない…

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