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新型コロナウイルス対策特集
中日新聞LINKED〈発〉

心を生きのびよう③―ある臨床心理士のつぶやきー

第3回 withが求めるもの

2020年6月8日|714 VIEW

前回はこちら>>心を生きのびよう②―ある臨床心理士のつぶやきー

「#息ができない」

先月25日の事件を発端に、世界に広がる抗議デモ。暴動にまでなった地域もありました。(5月25日に黒人男性であるジョージ・フロイドさんが、白人警官数名にのどを押さえつけられそのまま死亡したことに世界中で抗議デモが起きました)

新型コロナウイルスに対して全力で注意を持続している私たちにとっては、考えなくてはならない問題であるのはもちろんなのですが、デモの光景に心配を感じませんでしたか?配信される報道写真の中の、多くの人がマスクもなく密着をして・・・。

その背後には

あの抗議デモの背景に、新型コロナウイルスによるストレスが関係しているという見方があります。もちろん差別自体が大きな問題なのですが、同時に、ウイルスによって物理的にも精神的にも犠牲を強いられていることのストレスが、出口を求めて一気に噴出していると。

では、日本はどうでしょう。多くが単一民族の国ですから、今回の人種差別に対するデモは海外と同じようになる様子はありませんが、“抑えつけられたストレス”がないとは言えないはずです。

わかっちゃいるけど・・・

緊急事態宣言が出されたときに、ある期間我慢すれば台風のように一気に抜け去ってくれる、いや、抜け去ってほしいと心のどこかで願ったのもむなしく、専門家は「afterではなく、withを考えるべき」と言っています。

わかってはいるものの、気持ちの中では、今の警戒はいつまで続くんだろうと、つい暗いほうに考えてしまいがちです。

地下鉄や電車は混雑が戻ってきたし、これから暑くなるのにマスクはマスト・・・。

経済的にはもちろんですが、生活をしていく中でも、今の状態は少し緩和されたとはいえ、頭の中でいつもアラームが鳴っている状態だといえるでしょう。

 

意外な“生きる力”

ふつう、人の精神はそんなに頑丈ではありません。アラームが鳴り続ければ、参ってしまってうつ状態になることもありますし、逆に、ほかの何かを責めたくなったりもします。

八つ当たりのようになるのはベストな方法ではないのですが、しかし“生きる力の現れ”でもあります。
押さえつけられてしなった枝が、折れずに負荷を跳ね返すような力が、心にはあるのです。

それが本来向かうべき方向と違う方向へ行っちゃった結果が、八つ当たりなんですね。「柳に風」という言葉がありますが、そんなふうにできるのはある意味、状況をあきらめてしまったからできる態度なのかもしれません。

「宙ぶらりん」

つらいことですが、それでも私たちはこの状況と共存する術を見出さないといけません。不安な気持ちになるのも自然なことです。

以前にも書きましたが、“絶対大丈夫!”と頑張らないようにして、でも希望を失わないようにして。

臨床心理の大家、河合隼雄氏は言いました。
「宙ぶらりんな状態でいられる感覚が大事」と。

適度、ということがいかに大事かを教えてくれる言葉です。

画像提供:PIXTA

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