中日新聞LINKED〈発〉

医療崩壊って、「何」が崩壊するの?(3)

今一度、正しい情報を確認しよう。

2020.04.2341 views

医療崩壊とは、治療を必要とする患者に十分な治療を提供したくても、できない事態に陥ることです。
では、医療崩壊とは、具体的に「何」が崩壊するのか。第3回は、病院の「医療機能」にフォーカスします。

新型コロナウイルス感染症以外にも、病気やケガはいろいろ。

新型コロナウイルス感染症の報道に囲まれていると、忘れがちですが、私たちの病気はそれだけではありません。日本における死亡原因となる三代疾病は、「がん」「心疾患」「脳血管疾患」です。それ以外に、肺炎、腎不全、認知症などで入院している患者もいますし、交通事故や転倒事故などで治療を受けている患者も多くいます。
病院が新型コロナウイルス感染症の治療に重点を置くと、こうしたほかの病気やケガの治療が後回しになります。政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」では、「医療機関は、BCP(事業継続計画)も踏まえ、必要に応じ、医師の判断により延期が可能と考えられる予定手術や予定入院の延期を検討すること」と示していますが、実際、多くの病院で予定手術や予定入院の延期が行われています。その延期により、患者が不利益を被らないとは言い切れません。

※新型コロナウイルス感染症対策本部「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」 (令和2年4月7日改正)

救急医療が崩壊する危機。

新型コロナウイルス感染症の治療に重点を置くために、外来診療や救急医療も縮小されています。とくに院内感染が発生した病院では、職員が大幅に不足し、救急患者の受け入れや外来診療を休止せざるを得ません。病院がこれまで担ってきた地域医療の役割を果たすことができなくなっています。
「命の砦」ともいうべき地域の中核病院が救急の受け入れを休止すれば、救える命も救えなくなります。こうした状況に強い危機感を持つ日本救急医学会と日本臨床救急医学会は4月9日、「救急医療体制が危機的状況にある」と指摘する声明を発表しました。その中で、「発熱や呼吸器症状を訴える患者を受け入れる救急病院が少なくなっていること」「その結果、肺炎疑いの患者などは、救命救急センターで受け入れることになり、本来の重症救急患者の受け入れができなくなっていること」「とくに、心筋梗塞、脳卒中、多発外傷などの緊急を要する疾患においては、治療のタイミングを逸することが危惧される」と指摘しています。

※日本救急医学会と日本臨床救急医学会の声明「新型コロナウイルス感染症に対応する学会員、救急医療関係者の皆様へ

地域医療を守るために、病院の役割分担と連携を。

救急医療をはじめとする地域医療を守るには、さまざまな側面からの取り組みが必要ですが、その一つは、地域の病院の役割分担と連携です。大阪府などでは、新型コロナウイルス感染者のうち、酸素吸入などが必要な中等症の患者を受け入れる専門病院を整備する計画を発表しています。このように新型コロナウイルス感染症の患者を集約して受け入れる病院が増えれば、院内感染の防止とともに、救命救急センターやICUの負担の軽減につながることが期待されます。
厚生労働省も、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」の中で、新型コロナウイルス感染症の患者を集約して優先的に受け入れる医療機関の指定など、地域で役割分担し、必要な病床を確保する必要性に言及しています。

大学病院が、感染症患者の受け入れを強化。

全国各地にある大学病院の一部でも、新型コロナウイルス感染症の重症者を受け入れる態勢づくりが進められています。
大学病院は本来、教育・診療・研究の3つの役割を担い、診療においては、難病患者などに高度な医療を提供しています。しかし、新型コロナウイルス感染症の治療で逼迫した状況にある地域の医療機関を支えるために、感染患者をできるかぎり受け入れていく方向性です。そうなれば、人工呼吸器やECMOなど、大学病院が持つ高度な医療資源を、重症患者に提供していくことが期待されます。ただし、大学病院においても、医師が不急と判断した手術や入院を延期せざるを得なくなり、本来、高度な医療を必要とする患者に影響を与えています。

画像提供:PIXTA

中日新聞LINKED LINE〈公式〉アカウントはじめました。

ID検索
この記事をシェア

中日新聞リンクト編集部からのお願い

皆さまからいただくコメント・ご意見が、私たちの活力になります。より良いサイトづくりのため、皆さまの投稿をお待ちしておりますので、ぜひ下記投稿欄からお気軽にコメントください!

>