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新型コロナウイルス対策特集
中日新聞LINKED〈発〉

医療崩壊って、「何」が崩壊するの?(2)

今一度、正しい情報を確認しよう。

2020年4月20日|775 VIEW

医療崩壊とは、治療を必要とする患者に十分な治療を提供したくても、できない事態に陥ることです。
では、医療崩壊とは、具体的に「何」が崩壊するのか。第2回は、病床や医療機器といった「ハード面」にフォーカスします。

 

深刻な病床不足に陥る。

このまま、新型コロナウイルス感染症患者が急増すれば、病院の入院ベッドは確実に不足します。『STOP!コロナウイルス オーバーシュートに備えて、病院は今』で紹介したように、東海三県では、急性期病床の50%前後が、感染症患者で埋まってしまう計算になります。
各自治体では病院と協力し、受け入れ可能なベッドを増やすために奔走しています。同時に、症状のない人や軽症者を一時的に収容する施設の準備を進めています。しかし、患者の急増に追いつかなくなることが懸念されます。

イタリアよりも少ない日本のICU(集中治療室)病床数。

重症患者を受け入れる病床を、ICU(集中治療室)といいます。ICUは、モニタリング用機器や生命維持装置を備え、重篤な患者に対し、24時間体制で集中的な治療を提供するところです。しかし、日本のICU病床数は欧米と比べて圧倒的に少ないのが現実です。
その病床不足を危惧し、日本集中治療医学会理事長の西田 修氏は、4月1日、「新型コロナウイルス感染症(COVID19)に関する理事長声明」を発表しました。その中で西田氏は、イタリアとドイツの死亡率の違いは、集中治療体制の違いだと考えられる述べています。表で比較してみましょう。

人口10万人あたりのICU病床数 新型コロナウイルス感染者 死者 死亡率
ドイツ 29~30床 71,808 775人 1.1
イタリア 12床程度 105,792人 (3/31) 12,428人 (3/31) 11.7
日本 5床程度 8,582人(4/16) 136人(4/16) 1.6%


日本のICUのベッド数はイタリアの半分以下であり、死者数から見たオーバーシュートは非常に早く訪れることが予想されます。」と西田氏は指摘しています。

※日本集中治療医学会のホームページ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する理事長声明」より
※日本のデータは「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年4月16日版)」より。日々更新されています。

集中治療を受けられずに、命を落とす可能性も。

集中治療室の少ないイタリアでは、重症者の多くが集中治療を受けることができずに亡くなっていると思われます。それは決して対岸の火事ではなく、少し先の日本で起きることかもしれません。
「新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会」のツイッターでは、『もしかしたら集中治療の現場でおこるかもしれないこと』と題して、重症な肺炎患者が急増し、医療資源が不足すれば、命を救える可能性が高い患者を優先して集中治療室、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO:エクモ)などを使用し、可能性が低い患者さんの治療を後回しにしなければならなくなることもあると、説明しています(※)。
どの患者の治療を優先させるかという「命の選択(トリアージ)」が起こる可能性があるのです。

新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会

不足する医療機器や感染防護具。

不足するのは、病床だけではありません。今後、病院では、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO:エクモ)といった、重症な肺炎治療に不可欠な医療機器が不足することが予想されます。また、医療従事者を新型コロナウイルスから守る医療マスクや防護服もすでに不足しています。
政府はこれらの増産を産業界に依頼。さまざまな企業が医療装備の生産を表明しており、産業界総出で支援の輪が広がっています。患者の命を守るための医療機器、医療従事者の命を守るための防護具、そのどちらも早急に生産し、医療現場に届けなくてはなりません。

 

 

画像提供:PIXTA

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