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消化器|潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎の基礎知識

がんの原因にもなる慢性的な炎症、潰瘍性大腸炎

2022年3月3日|1,481 VIEW

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、血便や下痢、腹痛などが続くのが特徴。症状が悪い時期(再燃)と落ち着いている時期(寛解)を繰り返すことが多く、特定疾患(難病)に指定されています。定期的な検診と治療を受け、上手に付き合っていくことが大切です。

潰瘍性大腸炎についてと特徴的な症状

潰瘍性大腸炎は、症状の強さで「軽症」「中等症」「重症」「劇症」に分類されます。また、炎症の場所によって、炎症が直腸のみの「直腸炎型」、炎症が直腸から下行結腸までの「左側大腸炎型」、炎症が横行結腸より口側までの「全大腸炎型」があります。

原因は完全には解明されていませんが、近年、免疫異常により発症することが分かってきました。免疫異常の要因には、遺伝や環境、腸内細菌の異常、欧米型の食生活などが関係していると考えられています。

<具体的な症状について>

重症度や炎症の場所によって症状や強さが異なります。もしも何かしらの違和感を感じたらすぐに病院に行くことをおすすめします。

症状について
腸の粘膜がむくんだり、はがれたり、出血したりします。これによって下痢、血便、腹痛などの症状が出現。ただし、炎症の場所によって症状の出方や強さが異なります。重度になると腸が狭くなってしまい、発熱、倦怠感、貧血、体重減少などの全身症状が現れます。

また発症してから時間が経つとがん化するケースも。また口粘膜の潰瘍のほか、目や皮膚の炎症や手足の関節の痛み、肝臓の異常を伴うことがあります。

潰瘍性大腸炎の検査から治療方法まで

潰瘍性大腸炎は、原因が特定されていないため、完全に治す方法は確立されていません。そのため「内科的治療」と「外科的治療」で、腸の炎症を抑えて症状を和らげる治療を行っていきます。

以下の順で診断をしていきます。診断結果によって、治療方法は異なります。

①他の腸炎と区別するための検査
菌による腸炎と区別するため、便や血液の検査、ツベルクリン反応などで鑑別を行います。また、薬の副作用で腸炎を生じていないか、薬の服用歴も確認します。

②大腸検査
大腸のX線検査や内視鏡検査を行い、炎症の状態や範囲を調査。粘膜組織を採取する病理検査(生検組織検査)を行うこともあります。

③診断結果を踏まえて治療に

<内科的治療>

薬による治療が内科的治療です。

5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤
飲み薬のほかに、浣腸タイプや坐薬など肛門から注入する局所投与の場合もあります。

ステロイド剤
5-ASA製剤で治療効果が得られない場合には、ステロイド剤の内服や局所投与になります。ただし、長期間の服用は副作用のリスクがあるため、期間を決めて使用します。

免疫調節薬
免疫異常を鎮める薬。ステロイド剤を減量すると症状が悪化する場合に選択する場合があります。

血球成分除去療法
血液中の炎症細胞を除去する治療です。ステロイド剤の効果がない場合や、減量すると再発する場合に行うことがあります。

抗TNF-α抗体薬
腸管の炎症の原因となるTNF-αという物質を抑えることが可能。点滴または注射で服用します。

<外科的治療>

内科的治療の効果が見られない場合や重症の場合、がんの疑いがある場合には、全大腸の摘出手術が行われます。

症状が落ち着いている寛解期は、定期的な通院以外は健常者と同じように生活できます。ストレスや疲労をため過ぎない、暴飲暴食をしないことが大切です。再燃期には十分な睡眠や休養をとり、腸にやさしくバランスのよい食事を心がけましょう。繊維質、脂肪分、油分が多めの食品、刺激物、アルコール類は腸への負担が大きいためNGです。

寛解状態を保つことで、再燃を防ぐのはもちろん、大腸がんの発症リスクを抑えられます。そのため、自己判断で治療を中止したり、ステロイドを長期間続けたりするのは避けましょう。定期的な検診で薬による治療効果を高め、バランスの良い食生活を心がけて、炎症を上手にコントロールしていきましょう。


参考文献・出典など
■日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)ガイドQ&A
■公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センター潰瘍性大腸炎
■武田薬品工業株式会社IBDステーション

画像提供:PIXTA

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