統合失調症の基礎知識
100人に1人が発症する統合失調症
統合失調症は精神疾患のひとつで、思考や気持ちをまとめづらくなってしまう病気です。思考や気持ちがまとまらないため、自身の行動や人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。ちなみに、統合失調症は2002年まで「精神分裂病」と呼ばれていました。
統合失調症の特徴的な症状
統合失調症の症状は、下記の3パターンに分けられます。
(1)陽性症状・・・ないはずのものを認識する症状
(2)陰性症状・・・あるはずのものがなくなってしまう症状
(3)認知機能障害・・・集中力や注意力、判断力など認知機能が低下する症状
それでは、各症状について詳しく紹介していきます。
陽性症状
・幻覚
実際には存在しないももを知覚するようになります。自分に対する悪口や噂が聞こえたり、ないものが見えるようになったりと、視覚や聴覚、嗅覚など知覚の方法は様々です。
・妄想
実際にはありえないことを強く信じ込むようになります。「誰かがずっと自分を見張っている」、「あの人は自分をだまそうとしている」などネガティブな妄想をするようになります。
・思考障害
正常な思考や考えができなくなります。会話中、つじつまが合わないことを言ったり、脈絡のないことを言うようになります。
・異常行動
急に叫びだしたり、意味のないような動きをしたりと、周りから見ると奇妙に映るような行動をするようになります。
陰性症状
・感情の平板化(へいばんか)・鈍麻(どんま)
喜怒哀楽の感情を表現することが少なくなります。また、他の人の感情に共感することも少なくなります。
・意欲の低下
自発的になにか行動を起こすことが少なくなるうえに、なにかを継続的に行うことも難しくなります。
・思考の低下
思考力が低下し、会話で抽象的な表現が少なくなり、端的な受け答えが多くなります。
・自閉
他の人とのコミュニケーションを避けるようになり、自室から出ることが少なくなります。
認知機能障害
・選択的注意能力の低下
音やものの動きなど、周囲にあふれる数々の情報の中から、会話や仕事などの必要なものだけに注意を向けることが難しくなります。
・比較照合能力の低下
現在の事象について、過去の記憶をもとに判断することができなくなります。例えば、Aさんが持っていたものと同じものをBさんが持っていると、BさんのことをAさんだと認識してしまいます。
・概念形成能力の低下
物事をグループに分けて概念化することができなくなります。例えば、洋服を種類別に分けて、タンスに分類して収納することができなくなります。
統合失調症の原因は?
統合失調症の原因や発症のメカニズムは、いまだに詳しく分かっていません。
原因としての可能性があると言われている代表的な要因は、「過度のストレスを受けること」、「神経伝達物質の乱れ」、「遺伝」、「その人の性格」などです。
詳しい原因は分かっていませんが、ストレスのかかる環境に身を置かないことが予防に繋がるかもしれません。
統合失調症の治療方法は?
統合失調症の治療は「薬物療法」と「リハビリテーション」を用いて行われます。
薬物療法では「抗精神病薬」と呼ばれる、脳内神経物質の働きを調整する薬を使い、症状の改善を試みます。しっかりと継続して服薬を続けることが大切です。
リハビリテーションでは、統合失調症やその治療方法について勉強し理解を深める「心理教育」、スポーツや音楽、デスクワークなどの軽作業を行い達成感や充実感の獲得を試みる「作業療法」、人と良好な関係を築くコツやストレスの対処法など生活の質の向上を測る「社会生活技能訓練(SST)」を行うことで、患者さんの社会への参加を支援します。
統合失調症の治療は、患者さんだけではなく、家族の方や医師と協力しながら、根気強く行っていくことが大切です。統合失調症でお悩みの方は、ご自身だけで抱え込まずに、まずは医療機関を受診してみましょう。
参考文献・出典など
■厚生労働省統合失調症
■公益社団法人日本精神神経学会統合失調症について
■統合失調症ナビ
■大塚製薬スマイルナビゲーター『統合失調症ABC』
■大日本住友製薬こころシェア『統合失調症の治療』
画像提供:PIXTA
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