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骨・関節・筋肉|椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアの基礎知識

単なるぎっくり腰と間違えやすい腰椎椎間板ヘルニア

2022年3月23日|1,158 VIEW

腰椎椎間板ヘルニアは背骨の疾患ですが、「ぎっくり腰」と呼ばれる急に起こった腰痛の原因の一つとなっており、進行すると様々な身体の障害を生じる危険性があります。
今回は「腰椎椎間板ヘルニア」について解説していきます。

椎間板ヘルニアの特徴的な症状は?

「椎間板ヘルニア」という言葉をご存じの方は何となく腰の疾患であるイメー ジを描くかもしれませんが、厳密には背骨の疾患です。背骨は頭を支える7つの頚椎、背中を支える12 個の胸椎、腰を支える5個の腰椎、仙骨、尾骨からなっています。

「ヘルニア」とは臓器や組織が本来ある位置から出てしまった状態で、背骨の場合は、背骨をつなぎクッションの役目をする椎間板の一部が飛び出して神経を圧迫し様々な症状を引き起こしますが、生じた部位により頚椎椎 間板ヘルニア(首)、胸椎椎間板ヘルニア(背中)、腰椎椎間板ヘルニア(腰)に 分かれます。

頚椎椎間板ヘルニアの症状

頚椎に椎間板ヘルニアが生じた場合、初期には首の痛みや肩こり、背中の痛みが現れます。
また、頚椎の中には頚髄という神経が通っており、脳から手足への信号は必ずここを通って伝達されます。

そのため、神経の圧迫による症状が進行すると腕のだるさ・痺れ・痛みが現れることがあり、重症化すると箸が使いにくい、字が書きにくいといった上半身の症状に加えて下半身にも症状が見られるようになり、歩行障害や排尿のコントロールなどができなくなることもあります。

胸椎椎間板ヘルニアの症状

頚椎や腰椎に比べて胸椎に椎間板ヘルニアが生じる頻度は非常に少ないです。背部痛や肋間神経痛が生じる場合もありますが、進行すると歩行障害や排尿のコントロールが困難となることがあります。

腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎に椎間板ヘルニアが生じると臀部(お尻)や下半身に痛みやしびれが現れ、 進行すると下半身の動かしにくさや力の入りにくさを生じたり、排尿のコントロールが困難となることがあります。

「椎間板ヘルニアといえば腰」と認識している方が多いように、圧倒的にこの部位のヘルニアが多いです。
下半身のしびれや痛みは、ただ座っているだけでも起こりえる症状ですが、お尻から太もも、ふくらはぎの裏にかけての痛みやしびれのことを「坐骨神経痛」といいます。

椎間板ヘルニアが起こってしまう原因とは?

椎間板ヘルニアは、意外にも高齢者の発症よりも20〜40代での発症が多く、 全体のおよそ50%を占めていると言われています。
さらに、女性と比べて男性は椎間板ヘルニアのリスクが 2〜3倍になるとされて います。
若い人が多いのは、日常生活での活動が影響していると考えられます。

職業による脊椎の酷使

頚椎にヘルニアが起こる人は、首を酷使する職業の人が多いと言われており、例えば格闘技やラグビーの選手などが該当します。
一方で腰椎にヘルニアが起こる人は、腰を酷使する職業の人が多いと言われており、長時間座っていたり、運転する仕事、重いものを持つ仕事をしている人が該当します。

日常生活における脊椎の酷使

腰椎は頚椎に比べて日常生活での負担がかかりやすい場所です。
一般的に椎間板の中の圧力はまっすぐに立っているときに比べて座っているときや前かがみの姿勢、物を持つときに高くなっています。

長時間の運転や重いものを持つことは、専門職でなくても行う可能性が十分にある作業です。 前かがみになる動作や姿勢の悪さなども脊椎の酷使につながるため、日ごろから注意して生活することが重要です。

椎間板ヘルニアの予防のために、おさえておくべきポイント

座り方

日本人は、諸外国の人々と比べて座っている時間が長いと言われており、「1 日の中で平均7時間座っている」と報告した研究もあります。
1日の1/3 近くを占めるという行為は、先述した椎間板の中の圧力の変化からも椎間板に負荷をかける動作として理解できます。

座り方ひとつを気を付けるだけで、椎間板ヘルニアのリスクを下げることができます。床に座る場合は胡坐は避けて正座にしたり、椅子に座る場合は背もたれのある椅子に深く腰掛けたり、 時々、机に肘をついたり、膝を交互に組みかえたり、適度に休憩をとるなど腰への負担をかけ続けないように注意しましょう。

物を持つとき

前かがみや中腰の姿勢から持ち上げることはよくないため、腰を落として引き寄せてから持つように注意しましょう。

適度な運動

腰が痛いときにコルセットをつけることもあると思います。日頃からの適度な運動で腹筋や背筋がしっかりしていると天然のコルセットのような役割をしてくれるため、結果として腰への負担を軽減できます。

腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の原因の中で頻度が高い疾患で、進行すると神経麻痺などの深刻な障害をもたらす場合があります。腰痛に加えて臀部、下半身に痛みやしびれが生じる場合は腰椎椎間板ヘルニアの可能性があります。

痛みが激しい場合でも時間が経過すると症状が軽くなる場合が多いですが、深刻な疾患が隠れている場合もありますので早期にかかりつけ医を受診しましょう。


参考文献・出典など
■東京都北区「座りすぎ」ていませんか
■日本整形外科学会腰椎椎間板ヘルニア
■日本医療機能評価機構腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

画像提供:PIXTA

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