肝細胞がんの基礎知識
生活習慣病と密接な関係がある肝細胞がん
肝細胞がんの主原因はB型・C型肝炎ウイルスなどのウイルス感染ですが、近年生活習慣病に起因する脂肪肝・脂肪肝炎になる過程で肝細胞がんが発生するケースが増えています。
今回は「肝細胞がん」について解説していきます。
肝細胞がんの特徴的な症状は?
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるほど、症状の現れにくい部位です。
がんが大きくなり腹部に触れたり、破裂による腹痛を起こしたりすることで認識できることもあるようですが、症状が現れた時にはすでに進行が進んでしまっているということも少なくありません。
診察のきっかけとなる症状
肝臓がんに移行するまでに、慢性肝炎→肝硬変という過程を経ることが多いです。
この肝硬変に移行した時に症状が現れることがあり、違和感を覚えて診察にいくきっかけとなる症状には、「お腹の張り・腹痛・黄疸(おうだん:皮膚が黄色くなること)・食欲不信」などがあります。
ただし、症状が少ないもしくは現れていなければ早期がんとは言い切れないことも、この病気の厄介なところです。
進行段階
がんの進行が進むと、肝臓付近の部位に影響が出始めます。
倦怠感・浮腫(むくみ)・お腹に水が溜まる・黄疸・お腹の張りや痛みが現れます。
がんが転移を起こしていると、その転移した場所での症状が現れることもあります。
肝細胞がんになりやすい人は?
肝臓がんは、肝細胞がんだけでなく肝内胆管がんなどを含めたがんの総称ですが、一般に肝臓がん・肝がん=肝細胞がんを指すことが多いです。
日本国内では、年間2.5万人ほどが肝臓がんにより亡くなっているという報告があり、がんによる死亡数では5位に位置しています。
肝臓がんの中でも、肝内胆管がんを患いやすい人の特徴は現段階では解明されていないのですが、肝細胞がんは肝炎や肝硬変を患っている人に発生しやすいことがわかっています。
ウイルス性肝炎を患っている人
肝炎といえば、B型肝炎・C型肝炎を想像される方が多いとおもいますが、肝炎ウイルス自体はA・B・C・D・Eなどがあり、肝細胞がんのうちこのB型肝炎が約15%・C型肝炎が約60%近くを占めています。
肝炎ウイルスが肝臓に炎症を起こし、細胞の破壊と、自己回復を繰り返すことで慢性肝炎となります。
この慢性肝炎を経て肝硬変へと変化し、遺伝子異常が生じて肝細胞がんが発生します。
ただし近年ではウイルス性肝炎への研究が進み、ワクチン接種や検診により減少傾向にあります。
肝硬変を患っている人
肝硬変は、慢性肝炎が進行してしまい、肝細胞が死滅・減少してしまった状態です。 これにより肝臓が硬く固まってしまい、こうなってしまった細胞は元には戻りません。
生活習慣病
ここまでウイルスなど外部的な要因を記載しましたが、ウイルス性肝炎が減っているのに、肝細胞がんの死亡数が多いのは、この生活習慣病が関係しています。
現代人の生活には、多量飲酒・肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧・低栄養・ストレスなどさまざまなリスクが潜んでいます。
特に、飲酒は肝臓を悪くすることはイメージとしてあるかもしれませんが、アルコールによる脂肪肝を「アルコール性脂肪肝」といいます。
逆に、食生活によっても脂肪肝が引き起こされることがあり、これを「非アルコール性脂肪肝」といいます。
肝細胞がん予防・早期発見のために、おさえておくべきポイント
日常生活の見直し
上に書いたように、生活習慣病が脂肪肝を引き起こし、結果として肝細胞がんに発展することがあります。
すでに基礎疾患がある方、脂肪肝と診断されている方は、今のうちから日常生活を見直し、脂っこいもの主体の食事から野菜・魚・豆も取り入れる、毎日30分程度の適度な運動をするなどの改善を試みましょう。
肝炎検査を受ける
B型・C型肝炎ウイルスの検査は、お住まいの市区町村で無料で受けることができます。
また職場の健康診断でも、項目に追加することが可能です。社内の検診担当に確認してみましょう。
また、たとえ検査で肝炎が見つかったとしても、治療に関しては国からの助成が出ますので、積極的に治療を行うことが可能です。
参考文献・出典など
■東京慈恵会医科大学外科科学講座肝細胞癌とは
■がん情報サービス肝細胞がん
■日本成人病予防協会肝臓がんについて
■ウイルス性肝炎研究財団肝炎検査をするには?
■厚生労働省 e-ヘルスネットアルコール性肝炎と非アルコール脂肪性肝炎
画像提供:PIXTA
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