頭頸部腫瘍の基礎知識

「頭頸部（とうけいぶ）」というのは、脳より下で首より上の部位のことをいい、頭頸部腫瘍はその部位にできる腫瘍のことで、良性と悪性がありますが、悪性のものはいわゆる「がん」です。

頭頸部腫瘍で頻度の高いものは声門などの「喉頭がん」、舌や口底などの「口腔がん」、扁桃腺や舌根などの「咽頭がん」があります。
その他、副鼻腔にできる「上顎がん」、唾液を出す耳下腺や顎下腺にできる腫瘍、甲状腺などの身体の代謝に必要なホルモンを分泌する器官にできる「甲状腺がん」などがあります。

がんといえば、胃がんや肺がんなどをイメージする方が多いと思いますが、そのようないわゆる5大がん（胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がん）の割合からすると頭頸部腫瘍の割合は5%と非常に低く、年間の罹患者数は1.5〜2万人と言われています。

頭頸部腫瘍の発生要因として飲酒・喫煙がありますが、患者の85%以上は飲酒歴・喫煙歴もしくは両方があることが知られています。
そのほか、一部の咽頭がんはウイルス感染によって発生したり、放射線被爆の既往や遺伝子の突然変異によって甲状腺がんが発生することがあります。

喫煙

「喫煙指数」というものがあります。これは「1日あたりのタバコの本数×喫煙年数」で算出できますが、この値が600を超えるとがん発生の危険性があります。
特に喉頭がんでは喫煙者は非喫煙者の30倍以上罹患するともいわれています。

飲酒

「さけ指数」というものもあります。これは「1日の飲酒量(合数)×飲酒年数」で算出できますが、90を超えるとがん発生の危険性があります。

特に、長期にわたる喫煙・飲酒歴がある方は扁平上皮癌の発生リスクがほぼ40倍になり、飲酒で赤ら顔になるが好酒家や大酒家の方は、咽頭がんの発生リスクが約10倍上がると言われています。

先述した部位の話でピンと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、頭頸部には呼吸・発声・構音・咀嚼・嚥下(飲み込み)といった、日常生活を送る上で重要な機能に関わる部位が集中しています。
しかし、頭頸部腫瘍は健康診断や人間ドックの検査項目に入っておらず、初期段階での自覚症状も少ないため見落とされがちです。そのため、他の病気で受診し偶然発見されることも多く、気づいた時にはかなり進行していた場合もあります。

早期発見が非常に重要な病気ですので、部位別に主な症状を解説します。

口腔、舌

舌がんが半数以上を占めます。首のリンパ節の腫れやしこり、舌や口の中の粘膜の変化（色が白く変化したり、赤みが強くなる、ただれる、ザラザラする）、口内炎のような症状が現れ食事がしみることが増えます。これらは口腔がんに限った症状ではないため「口内炎だと思ったらがんだった」ということもしばしばあるようです。

上咽頭（鼻の奥の方）

鼻詰まりや鼻血、耳がつまった感じになるため聞こえにくくなります。目が見えにくく物が二重に見えたりすることもあります。

中咽頭（扁桃腺周辺）、下咽頭（食道の入口）

のど周辺に違和感や痛み、しみる感じがします。また、のどの違和感のため食べ物が飲み込みにくくなったり、首のリンパ節の腫れやしこりなどが現れます。

喉頭（声門）

中年の男性に圧倒的に多く、男女比は10：1と言われています。声門に影響があるので、声がかすれたり喋りにくくなります。 咽頭部の腫瘍と同じように飲み込みにくさや首のリンパ節の腫れやしこりなどを感じることもあります。

なお頭頸部腫瘍は耳鼻咽喉科の領域になりますので、何か気になる症状がありましたら早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

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