胃十二指腸潰瘍の基礎知識
上腹部痛や吐血・貧血を引き起こす、胃十二指腸潰瘍
胃十二指腸潰瘍とは、胃や十二指腸の壁に傷がつくことで、粘膜が欠損して孔(あな)があく病気です。胃十二指腸潰瘍は消化性潰瘍とも呼び、胃の壁にまで孔があいた場合、緊急に手術をしないと命に関わります。胃潰瘍が40歳以降の人に多いのに対して、十二指腸潰瘍は10〜20代の若者に多く見られます。
胃十二指腸潰瘍の特徴的な症状は?
胃十二指腸潰瘍は上腹部の強い痛みが特徴ですが、十二指腸潰瘍は夜間に空腹時痛がよく起こり、胃潰瘍は食後に上腹部の痛みがみられます。痛みの強さは必ずしも胃十二指腸潰瘍の進行度に比例しているわけではありません。痛みが軽くても重症化しているケースがあれば、重度の痛みでも軽傷のケースもあります。無症状というケースもゼロではありません。
さらに、潰瘍が形成されることで、潰瘍のある場所から出血することもあります。その影響で「タール便」と呼ばれる黒い便が出ることもあります。他にも、吐血や、吐血で血液が減少することによる貧血、疲れやすくなったり顔色が悪くなるという症状がみられます。
胃十二指腸潰瘍が起こってしまう要因とは?
胃十二指腸潰瘍については、以前はストレスが要因だと考えられていました。しかし、現在ではピロリ菌が要因だという説が有力とされています。事実、胃十二指腸潰瘍になる要因として、ヘリコバクター・ピロリと言われるピロリ菌に由来するものが、十二指腸潰瘍で95%、胃潰瘍で70%前後という検証結果が出ています。
このほか、抗炎症、解熱、鎮痛作用や血小板凝集抑制作用をもたらす「非ステロイド性消炎鎮痛薬(エヌセッド)」などの薬剤が要因となっていることも。エヌセッドの代表でもあるアスピリンを含め、多くのエヌセッドがさまざまな治療において使用されています。これらの薬剤が胃十二指腸潰瘍の要因となるのは、薬剤の作用によって、プロスタグランジンの合成が抑制されるためだと考えられています。プロスタグランジンは、胃酸から胃の粘膜を守る上で重要な役割を果たしているので、これが抑制されることで胃の防御機能の障害となってしまいます。現在、ピロリ菌とエヌセッドは胃十二指腸潰瘍の二大成因とされており、それ以外の要因については、日本ではわずか5%程度になります。
胃十二指腸潰瘍の対策となるポイント
胃十二指腸潰瘍の二大成因は前述したピロリ菌とエヌセッドになりますが、喫煙やストレス・食生活といった生活習慣も大きく関わってきます。
例えば脂肪分の多い食事やアルコール、カフェインを多く含む飲み物などは胃酸を活性化させます。そのため普段は平気であっても、胃などの調子が良くない場合は症状を悪化させないため控えるようにしましょう。要注意なのが、ストレスがたまり暴飲暴食をすることです。これらによって潰瘍が一気に悪化し出血する場合もあるので十分注意しましょう。
また胃・十二指腸潰瘍の症状がみられる場合は、早めにかかりつけ医の診察を受けましょう。(消化器専門医が望ましい)。特に強い上腹部の痛みを伴う場合は胃・十二指腸潰瘍の穿孔(孔があく)であったり、吐血や下血を伴う場合は胃・十二指腸粘膜からの出血である可能性があるため、救急外来を受診した方が良いでしょう。
胃十二指腸潰瘍の治療技術は、ここ20年ほどで大きな進化を遂げ治療法が確立されつつあります。昔ほど怖い病気ではなくなってきており、ピロリ菌とエヌセッドといった原因別の治療を行うことで、1年後の再発率は胃潰瘍で10%、十二指腸潰瘍で5%まで抑えられます。
早めの治療が重要ですので、定期的な健康診断を受けることで早期発見につなげましょう。
参考文献・出典など
■MedicalNote
■病院検索iタウン胃・十二指腸潰瘍
■QLIFE胃・十二指腸潰瘍
■オムロン ヘルスケア株式会社vol.93 胃・十二指腸潰瘍を悪化させない
画像提供:PIXTA
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