胎児胸水の基礎知識
胎児の肺の発育にも影響する「胎児胸水」
胎児の胸に水(リンパ液)がたまり、肺の発育の妨げにつながる疾患です。ダウン症(染色体異常)や心奇形によって発症している可能性もあります。
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胸膜腔に水がたまった状態
肺は胸膜という薄い膜で覆われ、胸膜は外側の胸膜(壁側胸膜)と内側の胸膜(肺側胸膜)の二重構造になっています。この間の空間が胸膜腔です。肺と胸壁の接触を防ぐために、健康な人でも胸膜腔には少量の水が存在しています。何らかの原因で胸膜腔に水が増え過ぎて、肺の外側の胸膜腔に水がたまった状態を胸水と呼びます。水がたまると肺がうまく膨らむことができなくなり、胸の違和感や呼吸困難などの症状が現れます。
胎児に胸水が生じた状態が胎児胸水ですが、胎児胸水は約10,000〜12,000に1例の頻度で発症すると言われている疾患です。
原発性と続発性の2種類がある
胎児胸水は原発性胎児胸水と続発性胎児胸水の2種類に分けられます。原発性胎児胸水は胸水以外に異常が見つからない胎児胸水のことです。胸膜のリンパ管(胸管)の一部から、リンパ液が漏れている状態で、リンパ液がたまっていることから乳び胸とも呼ばれています。
原発性胎児胸水は、母体の腹部に細い針を刺してたまった水を抜き取る治療法「胸腔穿刺」や、胎児の胸水と羊水の間に細いチューブをつけて胸水を排出する治療法「胸腔羊水腔シャント術」などで改善が期待できます。
一方、続発性胎児胸水は心奇形、不整脈、母体と胎児の血液型の不一致、感染症(PB19感染、サイトメガロウイルス感染)、染色体異常などが原因で胸水がたまっている状態です。続発性の場合はダウン症の確率が高く、胸水を取り除くことが根本的な治療につながらないので、慎重な判断が必要となります。
胸膜腔に水がたまるとどうなるか
胎児胸水のうち約20%は自然寛解、つまり自然に改善していくと報告されています。つまり、治療を施さずに出産が可能です。しかし、徐々に進行して水が大量にたまり、心臓を圧迫して胎児水腫や循環障害を引き起こすリスクもあります。
胎児水腫とは、胎児の胸や心臓の周りに水がたまり、むくみが生じた状態を指します。胎児水腫の原因は多岐にわたっていて、治療が可能な場合もありますが、子宮内や生後早期に呼吸障害で亡くなってしまうことが多いです。また、肺がたまった水によって長期間圧迫されると肺低形成を引き起こします。肺低形成とは肺が発育不全のため、出生直後から重度の呼吸障害を起こす疾患で予後は不良です。
先述したように約20%は自然に治っていくので、胎児胸水の疑いがあった場合でも焦らず、医師の判断を仰ぎましょう。
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母体にはどのような症状が起こるのか
大人の胸水では息切れと胸痛が典型的な症状ですが、胎児胸水は母体の症状からではなく健診時の超音波検査で判明する場合がほとんどです。左右の肺、胸椎、胸骨に囲まれた部分を縦隔と呼び、心臓や気管、食道など重要な臓器がある場所ですが、胎児胸水で縦隔が圧迫されると羊水過多が進行し、早産の原因になると言われています。また胎児胸水が進行し胎児水腫になると、胎児のむくみを反映するように、母体にもむくみが生じることがあります。いずれにせよ、超音波検査で確認することで早期の発見が可能です。発覚した場合は不安に思うかもしれませんが、医師の説明をよく聞いて適切な治療を受けましょう。
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