食道がんの基礎知識
食事だけでなく、声にも影響する食道がん
食道がんは、男性に圧倒的に多い病気です。
初期症状はほとんどないですが、進行により飲み込みにくさなど食事のしにくさが生じるため、比較的早く自覚しやすい病気といえます。
今回は「食道がん」について解説していきます。
食道がんの特徴的な症状は?
食道がんは初期症状がほとんどなく、がんが進行するにつれて各症状が現れるといわれています。
胸の違和感
がんが小さい時は、食べ物を飲み込もうとした時に胸の奥が痛んだり、熱いものを飲み込む時にしみるように感じたりすることがあります。
これらの症状は、がんが進行すると感じなくなることもあるようです。
比較的初期に生じるため、この違和感を感じた時点で内視鏡検査を受けることをお勧めします。
食べ物がつかえる
がんが進行し大きくなると、食道内でたべものがつかえるようになります。
特に、よく噛まずに食べたり丸飲みしがちな食べ物を食べたときに気づくことがあるようです。
さらに進行すると水や唾液も飲み込みにくくなり、食事がしにくくなることから摂取量が減り、結果として体重減少を引き起こします。
胸痛・背部痛
がんが食道の壁を超えると、近くの臓器や骨を圧迫されることで腹部や後背部が痛むことがあります。
気管支を圧迫すると咳がでるなど、がんの広がる方向により症状が若干異なりますが、主に肺・背骨・大動脈に広がっていくといわれています。
声がかすれる
食道のすぐ近くには、声を調整している神経があります。 がんの進行により、その神経が壊されることで、声がかすれることがあります。
食道がんが起こってしまう原因とは?
先に述べたように食道がんは男性に多く、男性の患者は女性の患者の5倍といわれています。中でも60〜70代が多く罹患します。また、日本の食道がんの90%は「食道扁平上皮癌」で、それ以外には欧米に多い「食道腺癌」があります。
飲酒・喫煙
食道がんに限りませんが、飲酒や喫煙は日本で多い「食道扁平上皮癌」の主要因となっています。
両方を好んで摂取している人は、そうでない人と比べてがん発生のリスクが最大30倍程度になることが知られています。
またお酒を飲んで顔が赤くなる人はアルコールの分解酵素が強くないため、飲酒による発癌リスクが高くなる傾向にあります。
逆流性食道炎
一方で欧米に多い「食道腺癌」では、肥満や喫煙に加えて逆流性食道炎が主要因として考えられています。
逆流性食道炎は、胸焼けや胸の不快感、酸っぱい液体が上がってくる呑酸などが特徴で、成人の1〜2割がかかえている病気です。
胃酸の逆流が繰り返されると、食道の壁面が胃の中と似た状態になることがあります。
この状態をバレット食道と呼び、食道腺にがんが発生するリスクを高めます。
食道がんの予防・早期発見のために、おさえておくべきポイント
食道がんの5年生存率(がん発見後5年間生存する割合)は約4割程度と、割合の多い大腸がんや胃がんと比べると低くなっています。
ステージⅠでは約8割、ステージⅡで4割、ステージⅢで2割、ステージⅣでは1割を切る生存率です。
ただし、他のがんと比べて5年生存率が低いと言っても、早期発見で予後がよくなるのは言うまでもありません。
食生活・嗜好品の見直し
先述したように、食道がんは飲酒・喫煙などの嗜好品や逆流性食道炎が原因になります。
逆流性食道炎の原因となるのも、飲酒や喫煙、甘いものや珈琲などの嗜好品、食生活などが深く関係しているため、飲酒・喫煙量をおさえる・バランスの良い食事をとる・適度な運動をするなど、普段の生活から見直せるところがないかチェックしておきましょう。
人間ドックを受ける
日本では、患者の多いがんについてはがん検診を受けられますが、食道がんには推奨される検診がありません。
そのため、「病気の早期発見」を目的とした人間ドックを受けることで結果として食道がんの早期発見が可能になります。
参考文献・出典など
■がん情報サービス食道がん
■日本癌治療学会がん診療ガイドライン
■国立がん研究センター中央病院 食道がんについて
■国立長寿医療研究センター逆流性食道炎ってどんな病気?
■日本消化器病学会ガイドライン胃食道性逆流症
■全国協会けんぽ食道がん
画像提供:PIXTA
中日新聞リンクト編集部からのお願い
皆さまからいただくコメント・ご意見が、私たちの活力になります。より良いサイトづくりのため、皆さまの投稿をお待ちしておりますので、ぜひ下記投稿欄からお気軽にコメントください!
(各病院への診療に関する質問・相談等はこちらではお答えできませんのでご了承ください)
コメントを残す