急性糸球体腎炎|専門医監修の解説とセルフチェック
【小児腎臓病】子どもに多い腎臓病、急性糸球体腎炎とは?
一般的に中高年の病気というイメージが強い腎臓病ですが、実は腎臓病のなかには、大人になってからよりも子どもの頃の方が発症しやすいものがあります。
今回はその1つである「急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)」について、病気の概要と原因・症状を解説します。
正しく病気を知り、お子さんの健康管理に活かしましょう。
急性糸球体腎炎ってなに?
腎臓には「血液をろ過し、体内の老廃物などを体外に排出する」というとても重要な働きがあります。その「ろ過機能」の中心的な役割を担うのが糸球体(しきゅうたい)です。糸球体は、毛玉のように球状になった細い血管のかたまりで、左右の腎臓に約100万個ずつあると言われています。
急性糸球体腎炎とは、この糸球体に、何らかの原因で突然炎症が発生し、血尿やタンパク尿、むくみ、高血圧などの症状が引き起こされる病気です。成人にもたまに見られますが、5歳から12歳頃までの子どもに多く、秋から春にかけて増える傾向があります。
主な原因は溶連菌の感染です。
急性糸球体腎炎は、基本的に細菌やウイルスによる感染症がきっかけとなって発症します。そのなかでも代表的なのが溶連菌(ようれんきん)を原因とする溶連菌感染症で、急性糸球体腎炎の約90%は溶連菌感染症の発症後に起きていると報告されています。
溶連菌感染症とは、溶連菌(正式名:A群β溶血性連鎖球菌)という細菌が、鼻やのどの粘膜、扁桃腺(へんとうせん)などに感染し、発熱(38〜39℃程度)、のどの痛み、全身のだるさ、イチゴ舌(※)といった症状を引き起こす病気です。基本的な症状は風邪やインフルエンザと似ていますが、溶連菌の場合は、せきや鼻水などの症状が出ることはほとんどありません。
※舌の表面がイチゴのように赤くブツブツした状態になること。
溶連菌のほかには、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルスなどの感染も、急性糸球体腎炎の原因になると考えられています。
こんな症状に注意しましょう。
急性糸球体腎炎の症状が出るのは、細菌やウイルスに感染してから1〜2週間程度経過した後です。ちょうど感染症による発熱やのどの痛みなどが落ち着いた頃に発症するため、症状によっては「風邪がぶり返した」と勘違いすることもあるので注意が必要です。急性糸球体腎炎には、いくつか特徴的な症状があります。軽症の場合には無症状なことも多いですが、もし、感染症後のお子さんに下記のような症状が見られる場合には、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。
〈急性糸球体腎炎の症状〉
■代表的な症状
・顔や足のむくみ(急激に体重が増加することもある)
・血尿(ウーロン茶やコーラのような色)
・尿量の減少
・高血圧
■風邪のぶり返しと間違いやすい症状
・何となく身体がだるい
・頭がぼーっとする
・食欲がない
基本的に治る病気です。
一度低下した腎臓の機能はなかなか元通りにはなりません。そのため、腎臓病の多くは、完治ではなく、それ以上、腎機能を低下させないことを目的に行われます。
これに対し、急性糸球体腎炎は完治をめざすことが可能な病気です。通常2〜3週間程度で症状は改善し、比較的長引きやすい血尿も、ほとんどの場合、半年から1年程度でなくなります。ただし、重症患者さんについては、ごくまれに腎機能に障害が残るケースもあります。
なお、長期間症状が改善しない場合には、急性糸球体腎炎ではなく「慢性糸球体腎炎」という別の病気が疑われますので、腎臓を専門とする医師に診てもらいましょう。
参考文献・出典など
■一般社団法人 日本腎臓病学会「急性糸球体腎炎」
■全腎協(一般社団法人 全国腎臓病協議会)「急性糸球体腎炎」
■公益財団法人 母子健康協会「幼稚園・保育園に通う年齢のこどもの腎臓病」
画像提供:PIXTA
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