中日新聞 地域医療ソーシャルNEWS
  • Facebook
  • Twitter
  • Line
病院の〈知識〉を生活者の〈知恵〉へ
岐阜県総合医療センター

尋常性乾癬治療での「生物学的製剤」とは

一般的な治療では症状の改善が難しい場合に検討される治療法:生物学的製剤

2022年7月5日|524 VIEW

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)は、痒みを伴い、皮膚に赤みや赤く盛り上がる発疹が出る皮膚病です。頭皮や陰部、爪など日常生活に支障をきたす部位に生じることも多いです。時に関節症状を併発することもあり、痛みを伴うこともあり、身体的、心理的、社会的そして経済的にも影響を及ぼします。すなわち尋常性乾癬は、患者さんにとっては大変苦痛を伴う皮膚炎なのです。
初期の治療方法としてステロイド外用薬・ビタミンD3外用薬などの塗り薬の塗布や光線療法があります。軽症の場合は改善するケースが多いですが繰り返し生じることもあります。紅斑面積が広く、関節症状等併発しているケースは、外用剤のみでは限界があり、PDE4阻害剤や免疫抑制剤などの内服薬の全身療法を併用します。それでも乾癬の症状が強く、これらの一般的な治療方法では症状の改善が難しい場合があります。そのようなケースに生物学的製剤を検討します。
2010年以降、乾癬に関する生物学的製剤は、乾癬生物学的製剤使用承認施設として指定された機関でのみ使用することが可能となりました。現在、尋常性乾癬では、サイトカインであるTNF-α、IL-23、IL-17が標的となった生物学的製剤が使用可能となっています。当院も乾癬生物学的製剤使用承認施設です。個人差はありますが、生物学的製剤を使用することで初めて、手のひら10枚以上の紅斑が消退し痒みもとれ日常生活を支障なく送れるようになった患者さんが多くおられます。しかし、すべての人が適応になるわけではなく、併発症状や合併症などを理由に導入を見合わせることもあります。
尋常性乾癬の生物学的製剤は、決して魔法の薬ではありません。肥満や喫煙などの生活習慣を見直す必要は当然ありますが、適切な患者さんに適切なタイミングで治療開始することも大切です。患者さんの今後を見据えながら、安全に治療を選択し、継続していくことが重要です。
今回は、尋常性乾癬治療の生物学的製剤ついて解説していきます。