脳卒中——①急性期医療
厚生労働省が重点的に医療提供体制づくりを進めるテーマとして、5疾病・5事業があります。今回はそのなかで「脳卒中」を取り上げ、急性期医療の取り組みについて紹介します。
◎5疾病・5事業については、こちらをごらんください。
一刻を争う脳卒中。迅速な搬送と専門的な医療が鍵。
「脳卒中」は、脳血管が詰まったり破れたりすることによって脳機能に障害が起きる疾患です。脳血管が詰まる病気が「脳梗塞」、脳の細い血管が破れる病気が「脳出血」、脳動脈瘤が破裂するのが「くも膜下出血」です。
脳卒中は突然発症する病気で、1年間に救急車によって搬送される患者の約8%、約28万人が脳卒中を含め脳疾患です(消防庁・平成28年版 救急・救助の現況より)。脳卒中を疑うような症状が現れたときは、速やかに救急車を要請し、できるだけ早く治療を始めることが大切。早ければ早いほど高い治療効果が得られ、後遺症も少なくなります。
国では、「発症後、専門的な診療が可能な医療機関への迅速な救急搬送」と「医療機関到着後1時間以内の専門的な治療の開始」を目標に掲げ、超急性期の救急医療体制づくりに力を注いでいます。
岐阜医療圏の救急搬送体制づくり。
岐阜県では県民に対し、脳卒中の症状や発症時の緊急受診の必要性を訴えかけ、脳卒中が疑われる場合の救急搬送の迅速化に力を注いでいます。
2015年の救急要請から医療機関に収容するまでの平均所要時間は、脳疾患が33.1分で、全国平均(39.3分)よりも約6分短くなっています。さらに、岐阜医療圏では一段と短く、29.8分まで短縮しており、24時間365日の迅速な搬送体制が構築されています。
救急隊員は病院到着前に脳卒中の重症度を判断し、適切な医療機関に送るよう努力しています。とくに脳梗塞で脳血管が詰まると、その先にある脳細胞に血液がいきわたらなくなり、脳細胞は死んでしまいます。脳細胞を救うために、必要な患者を超急性期の治療へつなげる懸命の取り組みが行われています。
岐阜医療圏の急性期の医療体制。
1.脳梗塞に対する急性期医療
脳梗塞に対しては、発症後4.5時間以内で、さまざまな条件を満たして入れば、脳血栓溶解療法(t-PA)が適応されます。これは、t-PAという薬剤を静脈内に投与することにより、血栓(血の塊)を溶かし、血流を再開させる療法。
しかし、中大脳動脈のような太い血管が閉塞した場合には再開通率が低いことかわかっています。その場合は、カテーテルを用いた脳血管内治療が行われます。
岐阜医療圏では、24時間体制で患者を受け入れ、脳血栓溶解療法(t-PA)を行える病院が7施設あり、脳梗塞患者を救うために日夜取り組んでいます。
2.脳出血に対する急性期医療
脳出血の治療は、血圧や脳浮腫の管理などが中心となり、出血部位によっては手術が行われます。
岐阜医療圏では脳出血に対応できる救急病院が9施設あり、迅速な治療に取り組んでいます。
3.くも膜下出血に対する急性期医療
くも膜下出血の治療は、予後を悪化させる最大の因子である動脈瘤の再破裂の予防が重要です。再破裂の予防のために開頭による脳動脈瘤クリッピング術か、血管内治療によるコイル塞栓術が行われます。
再出血は発症6時間以内に起こりやすいため、速やかな診断と治療が必要です。
■岐阜医療圏にて脳卒中に対応できる救急病院
- 国立大学法人岐阜大学医学部附属病院★
- 岐阜県総合医療センター★
- 岐阜市民病院★
- 河村病院
- 朝日大学歯学部附属村上記念病院★
- 医療法人社団誠広会岐阜中央病院
- 公立学校共済組合東海中央病院★
- 羽島市民病院★
- 松波総合病院★
- ※★は超急性期脳卒中加算の届出を行っている病院。脳梗塞の発症後4.5 時間以内にt-PAの静脈内投与による血栓溶解療法を実施することができる病院です。
岐阜医療圏の目標と課題死亡者数の減少をめざして。
脳卒中の死亡者数を減らすために、岐阜県では具体的な数値目標を掲げています。岐阜医療圏では、下記のように、年齢調整死亡率(人口10万対)の目標を設定しています。
この目標を達成するために、発症後、速やかに専門的な治療を開始できるよう、救急、診断、治療体制の整備を進めています。
また、脳卒中の早期発見・早期治療のために、脳卒中が疑われる症状や発症初期の症状が現れた際の早期の医療期間受診の必要性についての知識の普及が重要です。市民公開講座などを通じ、今後さらに地域住民への啓発活動を行なっていく必要があります。
2015年度 | 2022年度目標 | 2024年度目標 | |||
男性 | 36.2 | 24.0以下 | 21.0以下 | ||
女性 | 18.5 | 12.0以下 | 10.0以下 |
- ※年齢調整死亡率とは:道府県別に死亡数を人口で除した死亡率(粗死亡率)を比較すると、各都道府県の年齢構成に差があるため、高齢者の多い都道府県では高くなり、若年者の多い都道府県では低くなる傾向があります。このような年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように年齢構成を調整しそろえた死亡率が年齢調整死亡率です。
参考文献・出典など
■厚生労働省「第7次医療計画について」
■厚生労働省「第7次医療計画における5疾病・5事業 (がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患、救急、災害、へき地、周産期、小児)及び在宅医療の医療体制」
■岐阜県「第7期保健医療計画」
画像提供:PIXTA
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