心筋梗塞等の心血管疾患——③維持期医療と予防啓発
厚生労働省が重点的に医療提供体制づくりを進めるテーマとして、5疾病・5事業があります。今回はそのなかで「心筋梗塞等の心血管疾患(※)」を取り上げ、維持期(慢性期・生活期)の医療と予防啓発の取り組みについて紹介します。
※2018年度から、「急性心筋梗塞」は「心筋梗塞等の心血管疾患」と見直され、心不全などの合併症を含めた医療提供体制の構築が進められています。
◎5疾病・5事業については、こちらをごらんください。
病診連携を図り患者の生活を見守っていく。
心臓病の患者にとって、回復期心血管疾患リハビリテーションを実施する病院を退院し、自宅や施設に戻ってからも、継続的に再発予防・再入院予防の取り組みが必要です。国は、心血管疾患の臨床経過を踏まえた急性期から回復期、維持期(慢性期・生活期)までの一貫した医療体制づくりを進めています。
維持期においては、専門的な医療を提供する病院とかかりつけ医がしっかり連携して、引き続き必要な医療を提供し、基礎疾患や危険因子の管理を行うとともに、リハビリテーションを継続することで、ADL(日常生活動作)や運動能力の向上をめざしていきます。患者の状態によっては、在宅医療のサポートも行い、地域全体で心血管疾患患者の社会生活を支えていく体制づくりが目標になっています。
岐阜医療圏の取り組み---- 地域連携クリティカルパスの活用。
岐阜医療圏では、心筋梗塞の地域連携クリティカルパス(急性期・回復期病院・診療所が共通の治療計画書を用いて治療を行うシステム)を導入。病院と診療所の連携を深めて、急性期から回復期、維持期(慢性期・生活期)まで途切れのない医療を提供する体制を整えています。急性期・回復期の治療を終えて退院した患者は再発予防の治療や、基礎疾患の危険因子の管理を続けていくことになります。また、循環器系医療の専門家を中心とした医療機関(病院や診療所)やスポーツクラブなどによる急性期・回復期・維持期を通したネットワーク体制の構築に努めており、現在、地域連携クリティカルパスは、このネットワークの一部分として機能しています。
とくに、維持期において注力されているのが、心臓リハビリテーションの継続です。リハビリテーションを続けることにより、狭心症の症状改善、動脈硬化のもととなる危険因子の改善、血栓ができにくくなる効果などが見込まれ、心筋梗塞の再発や突然死を防ぎ、生涯にわたって快適な生活を維持することが期待されます。
岐阜医療圏の取り組み--- 予防啓発の推進。
心血管疾患に対する治療体制を整えるとともに、地域住民に予防を啓発していくことも重要です。
急性心筋梗塞の危険因子は、高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病、メタボリックシンドロームなど。発症の予防には生活習慣の改善や適切な治療が重要です。そのため、岐阜県全体、そして岐阜医療圏においても、特定健康診査と特定保健指導に力を注いでいます。
岐阜県全体で見ると、県の医療保険者全体の特定健康診査受診率は年々増加していますが、2015年度は49.0%で全国平均の50.1%をやや下回っています。特定保健指導の終了率は23.1%で、全国平均の17.5%より高くなっていますが、ハイリスク者への保健指導はまだまだ不十分だといえるでしょう。その一方で、岐阜県全体のメタボリックシンドローム該当者の割合は12.9%で、全国で最も低い水準になっています。また、岐阜県の市町村国民健康保険被保険者の特定健康診査受診率は36.6%で、全国平均の36.3%をやや上回っていますが、岐阜医療圏は34.7%で、全国平均を下回っています。
こうした結果を踏まえ、岐阜医療圏では、特定健康診査受診率や特定保険指導終了率を改善することで、心血管疾患の死亡の予防をめざしていく方針です。
参考文献・出典など
■厚生労働省「第7次医療計画について」
■厚生労働省「第7次医療計画における5疾病・5事業 (がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患、救急、災害、へき地、周産期、小児)及び在宅医療の医療体制」
■岐阜県「第7期保健医療計画」
画像提供:PIXTA
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