心を生きのびよう⑤―ある臨床心理士のつぶやきー
第5回 “慣れ”から離れる
前回はこちら>>心を生きのびよう④―ある臨床心理士のつぶやきー
習慣になってます
あるターミナル駅周辺の路上で、マスクを着けていない人が何人に一人くらいなのか観察してみました(あくまでもライター個人の見解です)。
昼間、かなり気温が上がった日でしたが、大きな交差点では、おおよそ30人に一人くらいの方がマスクなしでした。
熱中症の危険が言われるなか、難しい判断ではありますが、もう、マスクをつけるのは、私たちの新しい習慣だといってもいいでしょう。
くり返し、くり返し
習慣とは、学習の産物です。適していると感じたり考えたりしたことを、繰り返したり、繰り返そうと努力するうちに、いつの間にか「習慣」になる。
この新型コロナウイルスに脅かされている状況では、身を守る行動が繰り返され、私たちの新習慣とすべく、みんなが努力をしている。
「新しい習慣にしよう」という呼びかけもあり、習慣となってきているわけですね。
欲求の方向は?
ただ、心理学的には、人が行動を繰り返し行うには、自分の欲求に沿っていることが原則です。ウイルスの脅威をきちんと把握し、極端でない程度に予防行動をとる。そのような考えの人にとっては、前述したような行動は繰り返し行いやすいですし、習慣となりやすいでしょう。
でも、その行動に不満を感じている人の場合はどうでしょうか。
三密を避けるため、行動の自粛が始まったころ、パチンコ店に列をなす人を取材している様子がテレビに流れました。「いやあ、これしかないからさあ。どうしても来ちゃうんだよねぇ」というお客さん。
この人の場合は、予防の行動と、その人の欲求が同じ方向を向いていないわけですね。
「夜」とこころ
昨今、移動やさまざまな経済活動が再開されるなかで、夜の飲食店での感染者増加が報道されています。
経済的側面からも、文化的な視点においても、夜の社交ということに対して容易に是非は論じられません。
しかし、夜の社交や接客が、人が身近に寄り合うこと、近くによって話し合うこととなかなか切り離せないものだということは言えるでしょう。
「夜」というものが持つ性質として、そういうものを生み出すものだともいえるでしょう。
経済的な理由だけで、そのような業種があるだけではなく、そのような場所、そのような交流の仕方に心を癒される人も多いのではないでしょうか。
あるバーで
夜、音楽が低く流れるお酒のお店で、冷えたマティーニ(カクテルです)をバーテンダーがさっと差し出す。
その時にグラスのアルコール消毒を気にしなくてはいけない、そういう状況であるわけですね。
そのような新習慣になかなか馴染めない人もいても、心理学的にはなにもおかしくはありません。
理解を一緒に
けれども、今は、心理学的にあり得るからそのままでいい、という訳ではなく、自分の欲求と、情勢がどのようにずれているかを自覚しなくてはなりません。
それが辛い人もいるでしょう。理解しにくい人もいるかもしれません。
そのような場合には、その人と近しい人や、福祉、心理といった専門家の第三者などが介在して、その人の理解を促進してあげることも予防活動の一端となるといえるのではないでしょうか。
画像提供:PIXTA
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