コロナ禍での不妊治療
パート1
新型コロナウイルス感染症の影響で感染を心配して、様々なことが差し控えられてきました。不妊治療もその一つです。緊急事態宣言解除を受けて日本生殖医学会から治療再開へと声明が出されましたが、まだ戸惑う声があります。
今回は、2回に渡って不妊治療について特集します。
パート1では、日本生殖医学会が発表した不妊治療の差し控えから再開する方向へと変わった現状、パート2では、なぜ不妊治療延期を考慮する必要があるのか、不妊治療に関する助成金の要件変更、治療休止中にできることについて紹介します。
日本生殖医学会の声明
はじめに、日本生殖医学会が発表した不妊治療に関する声明は、どんなものだったのか説明していきます。
①4月1日発表「治療延期の声明」
4月1日、日本生殖医学会が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、不妊治療を延期するように検討を促す声明が出されました。この声明に強制力はありませんが、大学病院や総合病院などは新たな採卵や胚移植を中止しました。
不妊治療に伴うその他の手術、人工授精なども中止した病院が多いのが現状です。不妊治療を専門に行うクリニックでは、治療を休む選択肢を示しつつ、患者の希望によって治療を続けていたクリニックもあります。
この声明は、世界不妊学会(IFFS)」や世界の生殖補助医療の効果や安全性を監視する組織「国際生殖補助医療監視委員会(International Committee Monitoring Assisted Reproductive Technologies:ICMART)」などの国際的な機関の発表を受けてのもので、他の国でも同じような対応が取られていました。
②5月18日発表「治療再開の声明」
緊急事態宣言解除を受けて、5月18日に日本生殖医学会から不妊治療を延期していた夫婦に、感染予防を行った上で治療の再開を考慮する旨の声明が出されました。新たな採卵や胚移植、不妊治療のために必要な手術、人工授精などに関しても再開の目途が立ちました。
現在、新型コロナウイルスの流行がいつまで続くか不明であり、第2波の流行も懸念されています。同学会は、再び不妊治療の延期の選択もありうるとしながら、次のように治療再開の声明を発表しました。
治療再開の声明
●感染の動向が都道府県や地域によって異なること、患者さんごとに背景や感染した場合のリスクが異なる可能性があることなどから、不妊治療の種類と実施の可否についての選択は患者さんへの十分な説明と同意のもとに医師と患者さんでよく相談して実施すること。
●新型コロナウイルス感染に対する医療供給体制などの社会状況にも配慮しながら、それぞれの状況に応じた適切な医療を実施すること。
この声明を受けて、不妊治療を行っている病院やクリニックでは、ホームページ上で治療再開のお知らせが次々に発表されました。
待てない不妊治療
年齢に大きく左右される卵子の問題、妊娠は1か月に1度のチャンスしかないことから、できるだけ治療を進めたいカップルが多くいます。
治療を延期することは、将来子どもができないかもしれないというリスクが大きすぎると考える人もいます。
しかし、その一方で「もし新型コロナウイルスに感染してしまったら」という不安もぬぐえません。
そのため、不妊治療を行っている病院やクリニックなどでは、日本生殖医学会の治療再開の声明を受けて、「リスクを踏まえた上でカップルに治療するかどうかの決定を委ねている」のが現状です。
受診が可能になっても、病院側は診察時間の短縮や人数制限などを行い「3つの密」を避けながら、不妊治療を行っていくことでしょう。
受診する側も、マスクや手の消毒、可能な限り付き添いなしで受診するなどの配慮が必要になります。
新型コロナウイルス感染症は、感染者だけでなく赤ちゃんが欲しいと願うカップルにも影響を与えています。
これを受けて、日本政府は不妊治療に関する助成金を受ける要件を緩和しました。
この件は「新型コロナウイルス禍での不妊治療 パート2」で紹介します。
参考文献
1.日本生殖医学会
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの声明 (2020年4月1日版)
2.日本生殖医学会
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知(2020年5月18日版)
画像提供:PIXTA
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