心を生きのびよう―ある臨床心理士のつぶやきー
第1回 風が強い日は
心の守り
「防衛」という言葉がありますが、心にも「防衛」があることは知っていますか?身体には「免疫力」がありますが、心にも「防衛」力があります。
私たちが何か危険なものに襲われたら、逃げたり闘おうとしたりするのと似たようなものなのですが、それらが本能的なのに比べて、心の「防衛」は生まれたあとの育つ環境によって左右されます。つまり、防衛のスタイルは人それぞれ、様々な形をとるのです。
やっと…
どのような災害もそうですが、今回の新型コロナウイルスでもまずは人命の確保、感染者や救助に当たる人々の保全、状況分析が第一優先となりました。
しかし最近では、ダイヤモンド・プリンセス号にはたくさんのうつ状態の方が出ていたことが明らかになりましたし、先日は、休業をやむなくされ先行きに絶望したとんかつ屋さんの店主の自殺という、痛ましい出来事が報道がされました。
感染拡大への不安が蔓延し始めたころから予想はされていましたが、身体への影響はもちろん、経済の減退や不安の増大そのものから人々の心にも影響が出ることは必至でした。最近やっと、その精神的なダメージにも注目が集まり始めたといっていいかもしれません。
精神科クリニックでは
今回、精神科クリニックにカウンセリングに来る方たちの反応は様々でした。怖がりながらも、ご自分の精神状態には必要だからと通ってくる人がいる一方で、「自分は不安だから」と電話のカウンセリングを希望する人もいました。気持ちが少しでも落ち着くのであれば、どんな方法でもいいのです。
お父さんの頑張り
ご近所に若い家族がいて、お父さんは在宅勤務なのか仕事がなくなってしまったのか、5歳くらいの男の子と家の前の道でよくボール遊びをしています。あまりお付き合いがないので勝手な推測なのですが、その遊び方が過剰に楽しくしているようにしか感じられません。
こういうと誤解を受けるかもしれませんが、楽しそうすぎる、のです。
そして、このごろ窓を開けているせいもあって、毎日1度は、そのお父さんの猛烈な怒鳴り声が聞こえてくるのです。お父さんは、この事態を何とか乗り切ろうと一生懸命に心の防衛をしているのではないでしょうか。そして少し疲れてしまっているのかも。
おなかタプタプ?
在宅を楽しむ工夫がいろいろネットに挙げられています。その一方で、ストレスによる虐待、DVが増加しているともいわれています。
異常な事態に陥ったら、だれにでもストレスは降りかかります。
それに負けそうな自分がいたら、そのことを責めないでいいと思います。そして、電話でいいですから誰かに話しましょう。
無理やり楽しくしているとすれば、それは過剰防衛です。もちろん、踏ん張ることは大事ですが、心の防衛がきつくなりすぎないようにしたいものです。
カウンセリングに通ってだいぶ健康になった男子学生が言っていました。
「授業もないし、ストレス解消にロードバイクを買ったんですよ。でもねえこのごろ風が強くて走れません。おかげでおなかがタプタプです」
この状況は必ず変わるのだから、今はタプタプもありだよね、と思いました。
画像提供:PIXTA
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