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更新日:2022年6月20日 23PV
LINKED通信

【test】もし身近な人が、胸の痛みを訴えたら? 知っておきたい対処法。

記事のテーマ

いざというときに備えて、胸の痛みの対処法を知っておこう。

私たちの胸部には、心臓や肺など重要な臓器があります。とくに心臓は全身に血液を送るという、命に直結する働きをしています。ある日突然、身近な人が胸の痛みを訴えたら、命の危険を感じて動揺してしまうかもしれません。そんな場合に備えて、今のうちに対処法や心構えについて押さえておきませんか。

なお、胸の痛みの原因には、心臓のほか、肺、胸膜、骨、神経、筋肉、食道など、さまざまな病気が考えられます。ここでは、命に関わる心臓の病気(急性心筋梗塞)に絞って考えてみたいと思います。

あれ、どうしたんだろう。胸が締めつけられるように痛い。

健康さん一家の朝は、犬の散歩から始まります。この日も犬の散歩から戻ってきた夫の丈夫(たけお)さんですが、いつもと様子が違います。突然、胸の痛みを訴えて、リビングのソファに座り込んでしまいました。妻の千寿 (ちず)さんは驚いて駆け寄りましたが、思いがけないできごとで動揺してしまい、何をどうしていいかわかりません。

こんなとき、どんな対応をするのがいいでしょう。一緒に考えてみましょう。

胸の痛みの対処法(1) 胸のどこが痛いのか、確認する。

もし身近な人が胸の痛みを訴えたら、まずは、胸のどこが痛いのか 確認します。痛みの場所を知ることで、胸痛の原因を探ることができます。胸痛の場所は大きく分けて、「胸の表面で起こる痛み」「胸の深いところ(内臓)で起こる痛み」の二つに分けられます。

1.胸の表面で起こる痛み

胸の表面が痛い場合に考えられるのは、胸壁の神経や筋肉の炎症、けが、皮膚の病気(帯状疱疹)、風邪などです。刺すような痛みや、チクチクする痛みが多く、せきや呼吸により痛みが出ることもあります。

2.胸の深いところ(内臓)で起こる痛み

胸の深いところ(内臓)で起こる痛みは、心臓や血管の病気(急性心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症)の疑いがあります。

お父さん、大丈夫? 救急車を呼びましょうか。

丈夫さんは胸を押さえ、苦しそうな表情をしています。千寿さんは、「胸の奥が締めつけられるように痛い」という訴えから、心臓の病気を疑いました。でも、救急車を呼ぶべきか、様子を見るべきか、迷ってしまいます。

こんなとき、すぐに119番通報すべきなのは、どんな痛みの症状でしょう。ポイントを見てみましょう。

胸の痛みの対処法(2) すぐ救急車を呼ぶべき胸の痛みを知っておく。(※)

胸の痛みには、命に関わる心臓の病気(急性心筋梗塞)が原因であることが少なくありません。次のような症状がある場合は、躊躇することなく、119番通報をしましょう。

胸がしめつけられる痛みが長く続くようであれば、急性心筋梗塞の疑いがあります。急性心筋梗塞は、簡単にいうと、心臓に血液を送る冠動脈が詰まる病気。冠動脈が詰まると、心筋に血液がいかなくなり、最悪の場合、死に至ります。そうなる前に、できるだけ速やかに血流を再開通させなくてなりません。まさに一刻を争う病気であり、ためらうことなく救急車を呼ぶことが重要です。

今回は無事だったけど、今後、もし命に関わる心臓の病気になったら…?

電話からまもなく救急車が到着し、丈夫さんは近くの救急病院に搬送されました。病院の救急外来で「心電図」「心エコー」「血液検査」などが行われましたが、この頃になると、丈夫さんの胸の痛みもかなり回復。検査結果からも緊急治療の必要はないことがわかりました。ただ、もしかして、狭心症(冠動脈が狭くなる病気)になりかけているかもしれません。後日、外来を受診して、念のために、さらに詳しい検査や治療を受けることになりました。

千寿さんは安堵するとともに、もし今後、たとえば夜中に夫が今回より激しい胸痛を訴えた時、すぐ病院に運んで緊急治療してもらえるのかと気になり始めました。少し専門的な情報になりますが、急性心筋梗塞に対する地域の医療体制について確認しておきましょう。医療体制を把握しておけば、不測の事態にも落ち着いて対応することができそうです。

胸の痛みの対処法(3) 急性心筋梗塞に対する地域医療体制を知っておく。

「急性心筋梗塞」は、厚生労働省が重点的に医療提供体制づくりを進める5疾病・5事業の一つです。2018年度からは、急性心筋梗塞だけでなく「心筋梗塞等の心血管疾患」へテーマが広げられ、心不全などの合併症や急性大動脈解離などを含めた医療提供体制づくりが進められています。

急性心筋梗塞などの心血管疾患を発症した人の命を救うことを目標に、日本全国に24時間365日専門的な急性期医療を提供する病院が整備されています。

ここで鍵を握るのは、カテーテル治療(経皮的冠動脈インターベンション:PCI)を行える病院です。カテーテル治療とは、脚のつけ根や腕、手首などの血管から、カテーテルという細いチューブを差し込んで冠動脈まで挿入し、詰まっている部位を広げて血流を再開する治療。一刻を争う急性心筋梗塞に対して、非常に有効な治療法です。このカテーテル治療を24時間行える病院や、カテーテル治療と同時に、心臓血管外科手術(バイパス手術)も24時間行える病院などが地域ごとに整備され、各施設が医療機能を明確にし、効率的な連携体制を確立。さらに、これらの病院と救急隊が連携することで、一刻も早く緊急の治療を開始するために努力を続けています。

これからは、生活習慣を見直さないとな。

今回は事なきを得ましたが、狭心症の疑いがあると指摘された丈夫さん。「ちょっと生活習慣を見直そうか」と考えるきっかけになりました。

心臓の病気は、生活習慣と大きな関わりがあります。ここで、見直すべき生活習慣について確認しておきましょう。

胸の痛みの対処法(4) 心臓病の予防のために生活習慣を見直す。

生活習慣が乱れていると、心臓を巡る冠動脈が硬く、狭くなり、狭心症や心筋梗塞の要因になります。とくに注意すべきポイントは以下の通りです。

1.塩分や脂肪分の多い食生活

塩分をとりすぎると、血液の量が増え、血圧が上昇し、心臓に負担がかかります。

また、肉、乳製品などの動物性脂肪や飽和脂肪酸を取りすぎると、血中に悪玉コレステロールが増えて、動脈硬化が促進されます。

2.喫煙

たばこの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は血管内の細胞を傷つけ、血液の粘度を高めて血流を悪くします。喫煙者の血管は血栓(血のかたまり)ができやすく、冠動脈も収縮してしまいます。

3.運動不足

運動不足で筋肉量が減ると基礎代謝が悪くなり、太りやすく、内臓脂肪もつきやすくなります。血液の循環も悪くなって、生活習慣病のリスクが高まります。

これを機会に、心肺蘇生法も学んでおこうかしら。

夫の救急搬送、という体験を通じ、千寿さんは今まで以上に健康に高い関心を抱くようになりました。たとえば、急性心筋梗塞の死亡例の半数以上は、院外心停止といわれます。つまり、病院に搬送される前に、胸痛を訴えてそのまま心停止に陥るケースです。「もしも夫や父母の心臓や呼吸が止まってしまったら、私が応急処置をしなくては…」。千寿さんはこれを機に、心肺蘇生法についても学んでおきたいと考えました。

胸の痛みの対処法(5) 万一に備えて、心肺蘇生法について学んでおく。

心肺蘇生法とは、心臓や呼吸が止まってしまった人を救う方法です。具体的な手法を学ぶには、救命講習会を受けるといいでしょう。

救命講習会は、地域の消防署や日本赤十字社などで受けられます。お住まいの自治体や消防局などのホームページで検索してみてください。

心肺蘇生法の手順については、日本医師会の「救急蘇生法」をごらんください。

画像提供:PIXTA
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